赤羽業の慟哭【暗殺教室】3 (ページ1)

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夜が私を攫う前にページ1

イリーナの部屋で目覚めたのはお昼を過ぎた頃だった。

腹が減ってリビングへ向かうと作り置きしてあった
料理がテーブルの上に置いてある。

「温めて食べてね」と丁寧な字で書かれたメモが
残されていた。

レンジで温めて、それらを無理矢理喉に流し込む。
美味しいとわかるのに、味がしなかった。

テレビの電源を入れてニュースを見る。

チャンネルを次々に変えて何も無いことにホッとした。
カルマや私の事を話すニュースキャスターは
誰もいなかった。

衣服を脱いで脱衣所に向かう。
そのまま熱い風呂に足を入れた。

薔薇の香りがする湯船と私は真逆の存在
両手で輪郭を確かめる

スポンジで体を擦る。
白い肌を強くこする。

「＿＿＿＿消えないよ…」

滲む血を見て安心した

身体を傷つけることで心の痛みを体の痛みに変換する。Aにはリストカットと同じようなものだった。

あの大男達が死んだって、皆に話したって、カルマが殺してくれて捕まったって、イリーナや殺せんせーが私を守ってくれたって

私は忘れられないし、事実はずっと消えない

体があの日に浮かび上がる
私は天井から私を見てる

鼻から血を流して、腕には注射痕を付けた私が呆けた顔をして横たわっている

私は私を見つめる
生気を失った瞳が真っ黒になって瞬きをしないまま
そこにある

笑い声が聞こえる。
明らかに自分のものではない。
耳を塞いでも頭の中に響いている。

泡を吹いた母親の猫みたいな声
煙草とアルコールの匂い
男の加齢臭

＿＿＿＿＿私は過去に勝てない

私のこのトラウマを凌駕する楽しい想い出が、
私にはないから

家族との思い出もない
カルマとの楽しい想い出では、勝てない

風呂を出て体を吹き鏡を見た

痩せこけた体がかさぶたが出来ている
やつれたこと以外特になんともないように見えるけれど
違う

気持ちの悪い何かが体に染み付いている
何かが私の体を這っている

脱衣所を出ると、リビングに殺せんせーがいた。
どうやってここに入ったのかはわからなかった。

「＿＿＿過去から逃げる事は出来ない。

でも、今この場からなら…離れる事はできる」

先生はこちらを振り向かずに、私にそう言った。

その言葉の意味を理解して、私は考える。

「＿＿＿＿先生」

「先生の事、悪者にしてもいい？」