守んなくていいから ５

［３７］再スタート ページ29

渡辺side









「ヤバい……めちゃめちゃ緊張してきた……」


「えっ？ 大丈夫？ 1回戻る？」


「照来て。翔太運べる？」


「あ、違う。大丈夫。普通の意味の方これ」


「ああそっち？」



スタジオの端に並べられた椅子に座って
FC動画撮影のスタンバイの待ち時間。

とうとう来てしまったこの日に俺は
最近とは全く比じゃない緊張感で
心臓がうるさいくらい鳴り響いていた。



「ね、ふっか。ごめんもう1回確認させて」


「はいよー」



サプライズ見学から1週間後。

この日まで俺はあの夜言った通り、
度々みんなの仕事現場へ顔を出していた。


それこそグループメールで送られてきたものは
ほとんど行けたし、その度にみんな喜んでくれて。

俺自身も仕事への気持ちを
ゆっくりと作ることが出来た。


それから病院の方も忘れず通って、
心身ともに不安定になる波が少しずつ小さくなって。

つい2日ほど前にとうとう先生から許可を貰い、
予定していた今日、再開報告を行う日を迎えれた。



「最初挨拶して、近況みたいなの話して」


「そうそう。そんで俺が振るから」


「登場して再開のことを話す」


「ん。合ってる」


「ありがとう。
……あー、こわ……」



数ヶ月前までは当たり前にしてきたことが
こんなにも不安になるものなのか。


更には今になって待ちくたびれて呆れられてたらと、
嫌な想像がダメ押しみたいに出てきてしまって。



(はぁ……落ち着け俺……)



久々にやってきたネガティブに心が沈みそうで、
知らず知らず口が完全に閉じてしまった。



……でも。

こんな俺をずっと支えて、
ずっと傍にいてくれる人達は今も変わらない。



「あー！ 翔太の顔が死んでるー！」


「今なに考えてた！ ほら言ってみなさい！」


「ふっかに何かされたの？！」


「なんで俺だよ！！」


「ちょっとふっかさぁーん」


「違ぇよ！ 何もしてないわ！」


「っ、ふふ。確かにふっかうるさいかも。笑」


「おーおーなべまで止めろ！」


「ふはっ」



こうしてすぐに気持ちを軽くしてくれて、
くだらない不安を吹き飛ばしてくれる。


そんなみんながあたたかくて、
また甘えてしまった気もするけどやっぱ心地よくて。


だからせめて気持ちくらいは素直に吐き出せたらって
俺も遠回しに考えてしまっていたことを伝えてみた。

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