守んなくていいから ３

［２０−２］ ページ39

渡辺side









「よし。じゃあ10分後からリハ始めるねー！」


「はーい！」



楽屋へ全員揃ったことを確認したスタッフさんが
簡単に音頭を取って、外へ出ていく。


その後は水や必要な物を各自持って
スタジオへ行く流れ。

今回はテレビ局が私有している
とあるライブスタジオを
使用させてもらい生配信を行う。


ただ、昨日の今日なのによりにもよって
戸日野さんの働くテレビ局系列なのは
偶然訪れた産物だろうか。



「翔太、薬飲んだ？」


「っあ、うん」


「ん。なら良かった」



そっと涼太が耳打ちしてきて
素直に頷けば気遣うようにその場から離れる。


それだけじゃなくて、今日は会った時からみんな
いつものテンションで俺の様子を見てくれていて。

絶対に問い詰められると思っていた俺は
意外にも拍子抜けに近い思いで受け答えをしていた。



(……だけど、)



「あーいそれじゃいくよ〜」



ふっかの声にみんながドアへと向かっていく。


なのに俺は上手く足を進めることが出来なくて。

それは当然、昨日の出来事に対して
後ろめたさや申し訳なさがあるからだ。



だからこそ。

このあとの為にも、自分でどうにかしたくて。



「っねぇ、」



俺は楽屋を出ようとしているみんなへと声をかけた。



「んお。なに？ 忘れ物？」



引き止められたみんなは
心配するようにこちらを見てくれている。


そんなみんなへ俺は
無下にした気持ちを謝るように深く頭を下げた。



「……昨日は、ほんとごめん」



それから決してその頭は上げないように、
グッと拳を握って言葉を続ける。



「心配させて、迷惑かけてごめん」



静かに見守るように黙り込むメンバー。

それはまるで何も言わずに
俺の気持ちを最後まで
聞こうとしてくれているようで。


その優しさにまた自分の醜さに腹が立って、
胸がギュッと掴まれたように締め付けた。



「体調は……正直万全じゃない。
薬飲んでたって、やっぱり隠せない部分はある」


「……、」


「けど……それでも、」



ああもう。

ちゃんと伝えたい思いがあるのに、
どう言えばいいのか分からない。


頑張って言葉を探してみたって
上手く伝わってるのか分かんない。


みんなの顔を見るのが怖い。


そんな、臆病な自分が顔を出し始めた時だった。



「っ、？」



すっと誰かが俺の隣に近づいた。

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