守んなくていいから ３

［１５−２］ ページ17

渡辺side









ガシャン！



「っ、ぃっ、あ゛！」


「はぁ、あーもう」



頬に当たる乾いた音と共に崩れ落ちる体。


その弾みには部屋にある椅子へ思い切りぶつかって
また新たな痛みが太ももへ生まれる。


もはや耳を貸すつもりさえない戸日野さんは
俺の言葉を聞くこともなく殴り続けてきていて。

すでに防戦一方の俺も俺で何も出来ないまま、
動かない体へ受ける痛みや衝撃に
呼吸を荒らげながら耐えるしかなかった。


何度も受けてきた痛みは過去のものも重なって
もはやどこがどう痛いのか分からない。

ここ最近ずっと。


こんな関係が日常になってから、
生傷は治らず増えるばかりだ。

日に日に濃くなるアザも隠すことが精一杯で
どう動いたって体から軋む音がしていた。



「も……や、め……っ、」


「止めてってなに。
俺が一方的みたいじゃないですか」


「っ、」



(しまった……)



こうなってしまった戸日野さんへ
絶対に言ってはいけない言葉。

拒絶とも取れる俺の言葉に
更に戸日野さんが怒りを滲ませる。


それから強く握られた拳が
振り上げられるのが見えて。

反射的に目をつぶって
震えている体を丸まらせた。



「っ゛……！」



ドンッと派手ではないものの強烈な音で
落ちてきた痛みは肩に伝わり
声を我慢するように息を止める。


それでもまだ怒りが収まらない戸日野さんは
俺の胸ぐらを掴んで強引に立たせた。


そうして間髪入れず、
治りかけだった脇腹に膝がめり込む。



「い゛っ……！ げほっ！」



本気で圧迫された感覚と痛みに
たまらず床へ蹲ると、
背中に足が置かれてごろりと蹴飛ばされた。

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