［１０−４］ ページ34
渡辺side
振り返った先に見た、戸日野さんの姿。
俺の少し後ろにいた彼が
不意に近づいて微笑んだ。
「あれ。前に言ってませんでした？」
「いや……誰にも言ってないですね」
「そうでしたっけ？」
「……はい」
「あれ〜おかしいなぁ」
戸日野さんが1歩、1歩と近づいて、目の前に現れる。
その時には俺もこの状況が
何かおかしいことに気付いていて
咄嗟にドアを開けようと体を向き直した。
「すいません変なこと聞きました。行きましょ」
ガチャ、
ダンッ！
「っ！」
どこかいつもと違う雰囲気に押されて
逃げるようにドアを開ければ、すぐに閉じられる音。
嫌な汗がじわりと額に滲んだ。
「少し……お話しましょうか」
「は……、うわ、っ」
1つも表情を変えない戸日野さんに戸惑っていると
いきなり腕を掴まれてテーブルへと引き戻された。
「いっ……！」
「ああ。ごめんごめん。そこ痛かったよね。
僕もあの時まさか本当に当たっちゃうと思わなくて」
掴まれた右腕に顔を顰めると
いつものテンポで戸日野さんが淡々と
恐ろしいことを口にする。
もちろん何がなんだか理解出来ていない俺は
ただ置いてけぼりのまま。
けど、今のこの状況がよくないことは分かってて。
「や、めてください！」
戸惑いの中から溢れた言葉に
ようやく自分の身の危険を知れた気がした。
(逃げなきゃ……)
掴まれた腕を振りほどくように抵抗して、
必死でドアの方へと向かう。
その刹那。
バチン！
と、乾いた音が狭い会議室に響いた。
「ぇ……」
間抜けな声を上げた直後に自分の左頬に走る痛み。
思わず彼へと顔を向ければ
いつもと変わらぬ笑顔を貼り付けたまま、
「暴れないでくださいよ。ね？」
まるで人が変わってしまったかのように
戸日野さんはそう告げた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 803人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
つらら(プロフ) - 春さん» 春さん、コメントありがとうございます！ もう嬉しいお言葉に胸いっぱいです！笑 今はこの作品を完結させることを優先しているのでお時間頂きますが、春さんのお言葉に公開しようかなと甘えて思い始めました！ その時はこの作品共々是非よろしくお願いします！ (2021年3月17日 23時) (
レス) id: d8343dd607 (このIDを非表示/違反報告)
つらら(プロフ) - 青草さん» 青草さん、コメントありがとうございます！ そう言って頂けてめちゃくちゃ嬉しいです！ この先の展開もなかなか都合よくいかない地獄ですが、どうぞよろしくお願いします！笑 (2021年3月17日 23時) (レス) id: d8343dd607 (このIDを非表示/違反報告)
春 - このお話大好きです！いつもドキドキしながら読ませて頂いてます！公開未定の作品があるとのことなのですが、もし主様に少しでも公開したいという気持ちがあればぜひ公開してほしいです！主様の作品どれも大好きなので！！次の更新も楽しみにしてます！ (2021年3月15日 8時) (レス) id: dff8a5af6c (このIDを非表示/違反報告)
青草 - 本当にこのシリーズのお話面白いです！10のシリーズは展開でえぇ！？となりました 次の更新楽しみに待ってますね！ (2021年3月10日 17時) (レス) id: 8f7d50177b (このIDを非表示/違反報告)
つらら(プロフ) - 紫夏さん» 紫夏さん、コメントありがとうございます！ 紫夏さんの予想を裏切る形で驚かすことが出来て良かったです！笑 そして身に余るお言葉ありがとうございます。もっと楽しんで頂けるよう頑張っていきますのでよろしくお願いします！ (2021年3月9日 9時) (レス) id: d8343dd607 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：つらら
| 作成日時：2021年2月21日 1時
