33 ページ33
・
「じゃあ、行くよ…？」
「うん、」
手を繋いだ私たちは、家を出てドアを閉める
海人くんと手を繋いでいたら、もしかして怖さも半減するんじゃないか、って思っていた
だけど、現実は全然そうじゃない。
真っ暗な家の前の通り
もともと街灯の少ない街なのもあって、本当に暗い
昼間は青く眩しい海も、今夜だけは大きな黒い怪物に見えた
「……まじで無理なんだけど」
余裕がなさそうな海人くんが、繋がれた手にぐっと力を込めた
「行ける？Aちゃん、」
海人くんがその目をくるりと動かして私を振り向いた
なんとか頷くと、海人くんも頷いて、
私たちはやっと、歩き出した
でも、怖いものは怖いわけで。
街灯の少ないせいで近くのものしか見えないから、奥に行くのがとても怖かった
その時びゅっと風が吹く
「？！」
びっくりした私は思わず、海人くんの腕に飛びついた
「大丈夫？」
「あ、ごめんね」
急いで離れた私と黙っている海人くん
どうしよ、どうしよ、このままだと怖すぎる
海人くんの顔を見たら、口をついて出てきた言葉
「……あの、まだ怖いからもうちょっと、くっついててもいい？」
かなり大胆な発言をしたことに後から気がついた
だけどそんなこと言ってる場合じゃない、くっついていないと本当に心臓が止まりそうだし、今にも涙が出そう
海人くんは、驚いたように目を見開いたけど、
私の泣きそうな顔を見ると、
顔つきが、変わった。
「……いいよ、おいで」
そう言って、私の腕を引っ張った君
とん、とぶつかる肩と肩
「……離れんなよ、」
私を捕らえたその目が、いつもより強い目で一瞬ひるんだ私
「が、がんばる、」
私の震える声に海人くんがフッと笑う
「……まあこうなった以上、離れさせないけど。俺が」
「え、なんか急に余裕になってない…？」
海人くんの言葉にどきりとしたと同時に、その変わりように驚いた
「……だって、泣きそうじゃん。Aちゃん」
「えっと…関係ある？」
「むしろ関係しかなくない？いいからいいから！大丈夫。俺についてきて」
海人くんがそう言った瞬間に、電線のカラスがバサバサと飛んでいった
「わぁ！！……ねえまじでやめてそういうの！」
びくりと肩を震わせ、カラスに文句を言う君
結局は、君も怖いんだね。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 945人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しちみ(プロフ) - 詩愛さん» お返事ありがとうございました(^^)自分自身もコメントの内容を忘れてまして（汗）この時は今後の展開を知らなかったとはいえ呑気なコメントだなぁと（笑）自分自身がいかに楽しみに続きを待っていたか思い知らされました。もちろん、新作も楽しみに待ってます(^^) (2020年2月16日 20時) (
レス) id: 29142387b3 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - 詩愛さん» わあ！ほんとですか！！楽しみにしてます^ ^ (2020年2月15日 20時) (レス) id: 61704da698 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - 蜜柑さん» こんにちは！ありがとうございます！実はここだけの話ですが、今のターコイズブルーさんのお話のあとは深紅さんのお話を書く予定です！楽しみにしていてくださいね^^ (2020年2月15日 15時) (レス) id: 00cf9e51b5 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - しちみさん» こんにちは！コメントに気がつかずとっても遅れてしまいました…すみません！！！夏が意外といい季節だなぁと思っていただけたらとてもうれしいです^^ 読んでいただきありがとうございました！！本当に遅れてすみませんでした！ (2020年2月15日 15時) (レス) id: 00cf9e51b5 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - めっちゃいいお話でキュンキュンします！できれば今度紫耀くんでもお話書いて頂きたいです(^^)/ (2020年2月13日 22時) (レス) id: 61704da698 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：詩愛
| 作成日時：2019年7月11日 9時
