142 ページ44
・
そして迎えた、週末
溜まっていた家事をこなしていたら、
あっという間に午後になってしまった。
売り切れてたらやだな。なんて思いながら、
小さなカバンに、財布とケータイだけを入れて、
ティアラに行こうと、家を飛び出す
電車に乗っている時間が、あまりにも長く感じた
やっと着いたティアラの最寄り駅、
誰よりも早く階段を駆け上がり、
誰よりも早く改札を通り抜けた。
走って、走って
なんとしても、食べたくて。
私の疲れた心を、体を、
少しでも、楽にしてあげたくて。
・
「いらっしゃいませ、あ！」
ティアラにたどり着いて、息を整えつつ自動ドアを過ぎれば、
海人が今日も、そこに居た。
彼は私を見つけ、嬉しそうに微笑む
『海人、さくらんぼの、』
「あ、うん」
『さくらんぼのタルト、なんだっけ。チェリー・ブーケ、』
荒い呼吸で、そのケーキの名前を口にすると、
海人の口角が、きゅっと持ち上がった
『、ある？まだ、売り切れてない？』
レジに近付いて、ショーケースを見下ろすと、
ひとつだけ残っていた、お目当ての花束。
「………おめでと、A」
『はぁ、よかった、』
「今日もめちゃくちゃ人気であと一個だった〜。Aが間に合ってよかったほんと」
海人が口角を緩ませたまま、そのケーキを取り出す
淡い色の果実がしきつめられた、大好きなタルト
私の方まで、笑顔になれた
『おいしそう、』
「ね！俺、Aは絶対これ食べに来るって思ってたよ。」
『、そうなの？』
驚いた私の顔を見て、
海人は、へえ？と少し不思議な声を出す
「いやさすがに！俺も親友の好物を忘れるほど、バカではないので。」
にっこり、またその花が咲いた
″親友″、久しぶりに彼の口から聴けたその言葉に、
私はまた、感情が溢れそうになる
あの時間が、私たちの青春が、
また戻ってきたような、そんな錯覚に陥る
「えぇ〜！泣かないでよ！そんなつもりで言ってない！」
『ごめん、嬉しくてつい、』
涙を堪えて瞬きを繰り返す私に、
海人は今度は、大きな声で笑った。
「ミルクティー淹れるから、どっか好きなとこ座ってて。」
『うん、ありがと、』
「はいは〜い」
海人の声は軽やかで、懐かしく、
耳にとても、心地がよかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 486人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「King&Prince」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
詩愛(プロフ) - zzzさん» いつもありがとうございます。いろいろな見方をしてくださっていて本当に嬉しいです…！恋っていいですよね、本当に。最終章も何卒よろしくお願いいたします♡ (2022年6月12日 14時) (
レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
zzz(プロフ) - 詩愛さん、こんにちは。第３章完結、お疲れさまでした。廉くんの一心な思いを受け入れてほしい！と思いつつ、岸君への感情をもち続ける主人公ちゃんの一途さにも心打たれたりして。恋する気持ちって甘酸っぱくてやっぱりいいな。最終章も楽しみにしてます。 (2022年6月5日 16時) (レス) @page50 id: f02299600f (このIDを非表示/違反報告)
伶奈(プロフ) - 詩愛さん» もちろん読まさせてもらいます！💕最後まで岸さんと主人公ちゃんの恋を見届けます♡ (2022年6月3日 17時) (レス) id: 7a01d9d841 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - 伶奈さん» コメントありがとうございます！いつも楽しみにしていてくださっているみたいで本当に嬉しいです…！最終章、公開いたしましたので是非読みにいらしてください♡ (2022年6月3日 13時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
伶奈(プロフ) - このお話めっちゃ好きで続きが毎回気になるところで切られてて早く見たいってずっと思ってます！！次が最終章なのがちょっと寂しいですが最後まで岸さんと主人公ちゃんの恋を全力で応援したいと思います💕 (2022年5月26日 0時) (レス) @page50 id: 7a01d9d841 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：詩愛
| 作成日時：2022年4月13日 19時
