131 ページ33
・
ーーーーー
大学を卒業して、あっという間に2年が経った。
「Aさん、これもお願いね」
『はい、わかりました。』
企業の事務職に就いた私の毎日は、
特に悪いこともなく、
これといって、いいこともない。
目の前に、ぽんっと置かれた書類に手を伸ばす
仕事は、好きだ。
仕事をしている時は、いろんなことを忘れられるから。
私はまだ、岸さんのことを覚えていた。
いつまでも未練がましい。そう思われるかもしれない
だけどあんなにも唐突に、
なんの挨拶もなく、好きな人に去られたら、
誰だって引きずるんじゃないかな、と思う。
そして社会人になって、働き出して、
私はたまに、岸さんの元カノの存在を思い出すようになった。
綺麗で、自立していて、堂々としていて
何もかも敵わないなぁ、と思った、彼女のことを。
仕事の昼休憩
トイレの鏡の前で、ふと自分の姿を眺める
大学の頃よりもうまくなった化粧と、艶の増した髪
私はあの時より、人としても女としても成長したと思う。
あの女の人のようになりたい、その一心で、
いないのに、あなたはいないのに
自分磨きにかける時間を、惜しまなかった。
Aさんって、綺麗ですよね
大人っぽいですね、素敵です
周りの人に、そんな風に言われることも増えた。
だけどそう言われる度に、あなたの顔が浮かぶ
あなたにも言ってほしかった、
可愛い可愛いと、年下扱いするんじゃなくて
もっとひとりの女性として、見てほしかった。
あの当時は無理だったとしても、今なら。
今の私なら、岸さんも、
………なんて。
そんなことを考えては、また虚しくなる
2年が経った今でも、
私はあなたとのトークルームを見る癖が、治らない。
何気ない瞬間、ケータイを開いたタイミングで、
既読のつかないそのメッセージを、眺めてしまう
期待なんか、もう今更していない。
ただ、あなたと私が一緒にいた時間が、
幻なんかじゃなくて、ちゃんと現実だった、と、
確認したいだけ。
トークルームを開いては、閉じる
それはもういつのまにか、私の習慣になってしまっていた。
オフィスの窓から、外の景色を見てふと、ため息をひとつ
岸さん、今どこにいるんですか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 486人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「King&Prince」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
詩愛(プロフ) - zzzさん» いつもありがとうございます。いろいろな見方をしてくださっていて本当に嬉しいです…！恋っていいですよね、本当に。最終章も何卒よろしくお願いいたします♡ (2022年6月12日 14時) (
レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
zzz(プロフ) - 詩愛さん、こんにちは。第３章完結、お疲れさまでした。廉くんの一心な思いを受け入れてほしい！と思いつつ、岸君への感情をもち続ける主人公ちゃんの一途さにも心打たれたりして。恋する気持ちって甘酸っぱくてやっぱりいいな。最終章も楽しみにしてます。 (2022年6月5日 16時) (レス) @page50 id: f02299600f (このIDを非表示/違反報告)
伶奈(プロフ) - 詩愛さん» もちろん読まさせてもらいます！💕最後まで岸さんと主人公ちゃんの恋を見届けます♡ (2022年6月3日 17時) (レス) id: 7a01d9d841 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - 伶奈さん» コメントありがとうございます！いつも楽しみにしていてくださっているみたいで本当に嬉しいです…！最終章、公開いたしましたので是非読みにいらしてください♡ (2022年6月3日 13時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
伶奈(プロフ) - このお話めっちゃ好きで続きが毎回気になるところで切られてて早く見たいってずっと思ってます！！次が最終章なのがちょっと寂しいですが最後まで岸さんと主人公ちゃんの恋を全力で応援したいと思います💕 (2022年5月26日 0時) (レス) @page50 id: 7a01d9d841 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：詩愛
| 作成日時：2022年4月13日 19時
