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思えば岸さんには、一度も手を握ってもらえなかった。
そのことを思い出して、
永瀬さんの指先の温度を感じて、
人の温もりに、初めて触れて。
だけど、
だけど私の知りたかった温かさは、
この、永瀬さんのものじゃない。
そうじゃ、ないんだ。
『……、ごめんなさい、』
そっと彼の手を振り解き、
反対の手に持っていたフォークを、テーブルに置いた
「A、」
『ごちそうさまでした。帰ります』
永瀬さんの瞳がまた、揺れる
引き止めようと、しないでほしい。
そんな私の願いも虚しく、
私と同時に勢いよく立ち上がる、彼
「なんで……、なんでなん、」
顔を合わせられないまま、
だけどその痛いほどに切ない声が、耳に届く
「岸さんはもう、おらん。」
「俺の方が幸せにしてやれんのに、なんで、」
彼が言葉を続ければ続けるほど、
自分が、とっても馬鹿みたいに思える
いや、多分私は本当に馬鹿なんだ。
いなくなったことを受け入れられなくて、
ずっと、ただずっと残像を追いかける日々
忘れてしまえば、楽になれるのに。
諦めてしまえば、楽になれるのに。
でも本当に私は、
岸さんのことを忘れて、楽になれるのかな。
大好きな人のことを諦めて、
本当に幸せになんて、なれるのかな。
『…………永瀬さん』
私が呼べば彼のその薄い唇が、震える
ほら、私は馬鹿だから、
それからまだまだ、子どもだから、
『………それでも私は、岸さんのことを忘れません。』
こんな選択をすることしか、できないんです。
永瀬さんが、浅く息を吐く
私を見ていた視線が、床に落ちる
「………そっ、か」
恋って、全然甘くない。
「………そこまで岸さんのこと、好きなんや。」
むしろ痛くて、すごく苦い。
永瀬さんの言葉に頷くと、
彼は弱々しく、最後に微笑んでみせた。
「馬鹿やなー、岸さんも。」
「………こんなに想ってくれる子、置いてったりして。」
瞬間、また込み上げる感情
視界が歪む、頰を伝う
すると永瀬さんは、もう一言だけ、言葉を紡いだ
「…………でもAも馬鹿やな、ほんまに。」
寂しく、耳の中で反響する声
知ってます。と、返事をすれば、
永瀬さんが最後に、無理して笑ったような気がした。
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詩愛(プロフ) - zzzさん» いつもありがとうございます。いろいろな見方をしてくださっていて本当に嬉しいです…！恋っていいですよね、本当に。最終章も何卒よろしくお願いいたします♡ (2022年6月12日 14時) (
レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
zzz(プロフ) - 詩愛さん、こんにちは。第３章完結、お疲れさまでした。廉くんの一心な思いを受け入れてほしい！と思いつつ、岸君への感情をもち続ける主人公ちゃんの一途さにも心打たれたりして。恋する気持ちって甘酸っぱくてやっぱりいいな。最終章も楽しみにしてます。 (2022年6月5日 16時) (レス) @page50 id: f02299600f (このIDを非表示/違反報告)
伶奈(プロフ) - 詩愛さん» もちろん読まさせてもらいます！💕最後まで岸さんと主人公ちゃんの恋を見届けます♡ (2022年6月3日 17時) (レス) id: 7a01d9d841 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - 伶奈さん» コメントありがとうございます！いつも楽しみにしていてくださっているみたいで本当に嬉しいです…！最終章、公開いたしましたので是非読みにいらしてください♡ (2022年6月3日 13時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
伶奈(プロフ) - このお話めっちゃ好きで続きが毎回気になるところで切られてて早く見たいってずっと思ってます！！次が最終章なのがちょっと寂しいですが最後まで岸さんと主人公ちゃんの恋を全力で応援したいと思います💕 (2022年5月26日 0時) (レス) @page50 id: 7a01d9d841 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詩愛
| 作成日時：2022年4月13日 19時
