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・
親以外とは、廉さんとしか話さない生活。
お互い相手のことを詳しく知らず、
だけどそんな関係が、どこか心地良かった。
「Aさん、来て」
「あ、廉さん、」
今日も、看護師が全員部屋から出ていったあと、
廉さんがこっそりと、私の部屋にやってくる
周りを気にしながらふたりで抜け出す病室
ナースステーションの前を避けたり、人通りの少ない廊下を通ったり
そんな状況も、かくれんぼみたいでなんだか楽しめていたこの頃
「なんか楽しっすね、これ。ゲームみたいで」
階段を駆け下りながら、廉さんが私を振り返る
「廉さんもそう思いますか」
「も、っつうことは。もしかしてAさんも？」
「はい、ちょっと楽しいなって、思ってました」
交わる視線に、心がくすぐられ
思わず、ふたりで微笑みあった
「やっぱいいっすね。なんか」
「なんか？なんですか、それ」
「なんかは、なんかやん。察して？マジで」
廉さんが、少し照れたように視線を伏せる
その表情が甘くて、やっぱりどこか寂しくなった。
廉さんを見れば見るほど、
私の心の中で、何か大きなものが動くような感覚
それは優しく、だけど苦しい感覚だった。
・
そのあとも私たちは、ひたすら。
スリルを味わうかのように、院内のいろいろなところを探検した
いつか、廉さんか私が退院することが決まれば、
この世界は、終わる。
ふたりで座った中庭の片隅も、
寄りかかった踊り場の冷たい壁も、
すべてもう二度ときっと、戻ることはない
外の世界のことは、私には何もわからなくて。
一体自分がどんな生き方をしてきたのかもわからないし、
自分の居場所があるのかどうかも、定かではない。
だから。だからだと思う。
こんなに廉さんとの時間が楽しいのは、
私が廉さんしか、知らないから。
きっと、そうなんだ。
・
「じゃ、また」
「廉さん、また会いましょうね」
「当たり前やん。またな」
私の部屋がある廊下の片隅
今日も私たちは、ひっそりと秘密の時間を終える
手を振って、彼がそっと歩いていく
その後ろ姿をぼんやりと見送った
廉さんが見えなくなって、私もやっと自分の部屋に向かう
何も警戒せずに、部屋のドアを開けた瞬間、
「Aさん、遅かったですね。」
すべてを知っているような表情の医者が、
そこで私を、待っていた。
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詩愛(プロフ) - zzzさん» こんばんは！お久しぶりです！また読んでいただけて嬉しいですありがとうございます^^ 少しずつですがお話をまだまだ書いていますので、楽しんでいただけたら幸いです。こちらこそいつもありがとうございます！ (2021年10月30日 23時) (
レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
zzz(プロフ) - 詩愛さん、こんばんは。大変ご無沙汰しておりましたが、詩愛さんの作品の香りを嗅ぎ付けてやって来てしまいました( ￣▽￣)まずは第一章お疲れさまでした。これから先の展開もドキドキさせていただきますね。いつもありがとう。 (2021年10月29日 19時) (レス) @page50 id: f02299600f (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - ひだかくんさん» いつもありがとうございます！いろいろ気になることがたくさんありますよね……ぜひ今後の展開にも期待してくださいね。ありがとうございます、無理せず更新いたします！ (2021年8月4日 23時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
ひだかくん(プロフ) - 高評価が一回しか押せないのがすごく悔しいです(ToT)廉君と主人公ちゃんがこれからどうなっていくのかなとか、きちんと思い出せるのかなとかめっちゃ気になります笑 作者さんも無理のないようにしてくださいね！ (2021年8月3日 23時) (レス) id: 10f3d7dc91 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - ミツキさん» ありがとうございます！まだまだ先は長いので、今後もどうぞよろしくお願いいたします！ (2021年7月26日 15時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詩愛
| 作成日時：2021年7月24日 16時
