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・
「………そろそろ、戻らないと、」
「………せやな。見つかったら多分まずいし」
廉さんのその表情を、なんだか見ていられなくて。
思わずぽつりと呟けば、彼も私から目を逸らす
そして私たちの間に、小さな沈黙が訪れた
「………なぁ、Aさんはさ、」
「、はい」
ベンチから立ち上がる廉さん
その唇がそっと、私の名前を呼ぶ
「………こんな状況でも、」
「それでも俺が、Aさんと会いたいって言ったら、困りますか。」
廉さんの瞳がまた、私を射抜く
強く吹く熱い風が、その懐かしい香りを運んできた
廉さんから、″会いたい″
そんな風に言われたら、私、
「………困らない、です」
「……私も廉さんと、話したい。」
いつからこんなに、君の瞳に惹かれていたのか。
いや、きっと最初から。
初めて君を見た時から、ずっと。ずっと。
それは、大人たちに対しての小さな反抗心だった
廉さんは私の返答に、口角を上げる
「……じゃあ、また。会いに行きますね」
「Aさんに。」
うん、と頷いた私
廉さんはさっきよりももっと嬉しそうに笑って、
じゃ、戻ります。と一言残し、中庭を出て行った
・
その日から私と廉さんは、こっそりと会うようになった。
医者や看護師からの目を避け、
中庭で、時には人の少ない廊下の奥で
私たちは密かに会話を重ね、ふたりきりの時間を過ごす
「なんかええなぁ、こういう時間。」
ある日、階段の1番上の踊り場
ふたりで冷たい壁に寄りかかっていると、廉さんはそんなことを呟いた
「楽しいです、俺。Aさんと話すの」
「………、」
「あ、そっちはそうでもない感じ？」
「、いえ、そんなこと、」
慌てて否定をすると、彼がまた、くしゃりと笑う
「まーいいっすよ。俺は少なくとも、Aさんと話すの、好きです。」
「、ありがとうございます、」
かたい動きで少し頭を下げると、廉さんがフッと息を吐いたのがわかった
柔らかい、私たちの間に流れる空気。
「………そろそろ戻った方がええかな。親来てるかも」
「じゃあ、戻りましょう、」
「おん、じゃまた。」
廉さんが、ふわりと微笑み、離れていく
なんだか寂しくて、どこか心が痛くて
最後に振り返り、手を振る彼に向かって私は、
うまく、笑えていたのかな。
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詩愛(プロフ) - zzzさん» こんばんは！お久しぶりです！また読んでいただけて嬉しいですありがとうございます^^ 少しずつですがお話をまだまだ書いていますので、楽しんでいただけたら幸いです。こちらこそいつもありがとうございます！ (2021年10月30日 23時) (
レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
zzz(プロフ) - 詩愛さん、こんばんは。大変ご無沙汰しておりましたが、詩愛さんの作品の香りを嗅ぎ付けてやって来てしまいました( ￣▽￣)まずは第一章お疲れさまでした。これから先の展開もドキドキさせていただきますね。いつもありがとう。 (2021年10月29日 19時) (レス) @page50 id: f02299600f (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - ひだかくんさん» いつもありがとうございます！いろいろ気になることがたくさんありますよね……ぜひ今後の展開にも期待してくださいね。ありがとうございます、無理せず更新いたします！ (2021年8月4日 23時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
ひだかくん(プロフ) - 高評価が一回しか押せないのがすごく悔しいです(ToT)廉君と主人公ちゃんがこれからどうなっていくのかなとか、きちんと思い出せるのかなとかめっちゃ気になります笑 作者さんも無理のないようにしてくださいね！ (2021年8月3日 23時) (レス) id: 10f3d7dc91 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - ミツキさん» ありがとうございます！まだまだ先は長いので、今後もどうぞよろしくお願いいたします！ (2021年7月26日 15時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詩愛
| 作成日時：2021年7月24日 16時
