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・
その日から私と彼は、
院内で会うと必ず、話をするようになる。
「あ、会えたー」
「こんにちは、」
その日も、廊下をぶらぶら歩き回っていた私を見つけ、
少しだけ微笑みながら近寄ってくる彼
「なぁ、今日も時間大丈夫だったら、俺の話し相手なってくださいよ」
「時間あります、中庭で、いいですか、」
「もちろん。行きましょ、ほら」
肩を並べ、ふたりで中庭を目指す
いつもみたいに、ちょっとだけ。息が苦しかった
・
「そーいえば聞いてなかったっすね、名前」
中庭に着いて、ベンチに腰を下ろした瞬間、
彼が私の顔を覗き込みながら、そんなことを言う
いつもより少し近い距離
頭の奥がまた、ピキリと痛くなった
「名前、なんていうんすか。」
「………A、です、」
私が名前を告げた一瞬、
彼がぎゅっと小さく、眉をひそめる
その表情が歪んだのを初めて見て、何か、違和感を感じた
「………Aさん、って、呼ばせてもらいます」
「あ、はい、どうぞ、」
「俺は、廉です。永瀬廉」
少し感じた違和感は、あっという間に消え去り、
私は初めて、彼の名前を知ることになる
「……じゃあ、廉さんって呼びます、」
「ん、よろしくお願いします」
そう言ってまた、口角をこっそり上げて。
その表情になんとなく、心の奥がざわついた
そのあと、私たちはひたすらベンチで時間を過ごす
廉さんは気さくな人で、話していてとても楽しくて。
だけど、
私は、明るい彼の表情が空虚なものに変わる瞬間を、会話中何度も目にした。
すっきりと微笑む時もあれば、
他の大人の患者たちのように、遠くを寂しく見るときもあって。
そして私は、そんな風に彼を苦しめるものを、
知りたいと思ってしまった。
「………廉さんは、病気なんですか、」
聞いてしまってから、彼が私にこの質問をしなかったことを思い出す
慌てて取り消そうと思った言葉
だけど廉さんはまた、少しだけ笑って、
そのまま視線を、晴れた夏の空に向けた。
「………まあ、そうっすね。そんなようなもんです」
やっぱりまだ虚ろなその表情
無神経にこんなこと、聞くんじゃなかった。
「……ごめんなさい、言わせてしまって、」
「いや、気にしなくていいすよ！全然」
「……早く、良くなるといいですね、」
小さな私の声に、君は、
そうっすね、と、力なく微笑んだ。
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詩愛(プロフ) - zzzさん» こんばんは！お久しぶりです！また読んでいただけて嬉しいですありがとうございます^^ 少しずつですがお話をまだまだ書いていますので、楽しんでいただけたら幸いです。こちらこそいつもありがとうございます！ (2021年10月30日 23時) (
レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
zzz(プロフ) - 詩愛さん、こんばんは。大変ご無沙汰しておりましたが、詩愛さんの作品の香りを嗅ぎ付けてやって来てしまいました( ￣▽￣)まずは第一章お疲れさまでした。これから先の展開もドキドキさせていただきますね。いつもありがとう。 (2021年10月29日 19時) (レス) @page50 id: f02299600f (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - ひだかくんさん» いつもありがとうございます！いろいろ気になることがたくさんありますよね……ぜひ今後の展開にも期待してくださいね。ありがとうございます、無理せず更新いたします！ (2021年8月4日 23時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
ひだかくん(プロフ) - 高評価が一回しか押せないのがすごく悔しいです(ToT)廉君と主人公ちゃんがこれからどうなっていくのかなとか、きちんと思い出せるのかなとかめっちゃ気になります笑 作者さんも無理のないようにしてくださいね！ (2021年8月3日 23時) (レス) id: 10f3d7dc91 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - ミツキさん» ありがとうございます！まだまだ先は長いので、今後もどうぞよろしくお願いいたします！ (2021年7月26日 15時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詩愛
| 作成日時：2021年7月24日 16時
