50 ページ1
・
ふと目を覚ますと、部屋の中は真っ暗だった。
私、どうしたんだっけ。
ぷつりぷつりと断片的に思い出される記憶
たしか、ご飯を作っていたはず。
やっと目が慣れてきて周りを見回すと、
私は自分が、リビングのソファに横になっていることに気がついた
それから、
「………平野さん？」
私の手をぎゅっと握りしめたまま、
すぐそこで眠っている、平野さん。
私の声にぴくっと反応して、その目が開く
「………あ、Aちゃん起きた？」
「はい、えっと、」
「すげー熱だったから。心配で泊まらせてもらっちゃった。」
あなたはそう言いながら、微かに微笑む
時計を見れば、もう日付が変わっていた。
汗ばんだ私のおでこを、平野さんがそっと撫でる
「良かった、熱ちょっと下がってる。身体はしんどくない？」
優しく優しく、あなたの声と秒針の進む音
頷いて部屋の中を見回すと、
少し離れたところで寝ている、優太を見つけた
その時思い出す、
優太の、あたたかい腕の中。
苦しくて、
だけど嬉しかった、その温もり。
そんな優太の寝顔を見つめていると、
そっと、平野さんが私を抱きしめる
「……ねえ、どこ見てんの。」
「………、」
「今は、俺らだけの夜なんだけど。」
壊れないように、傷付かないように。
優しく、大切に私を包み込むその温度
たまらなくなって、私からもあなたの背中に手を回す
暗い部屋の中、愛しい名前を呼んだ
「平野さん、」
「あのさ、さっき。岸くんと距離近すぎ。」
そう言われて、ぐっと喉の奥が詰まる
倒れる直前、不意に近付いた優太の顔を思い出した
ねえ優太、あなたはあの時、
何をしようとしていたの？
「………でも、優太と私は兄妹だから、」
「そうだけど、そうじゃないんでしょ」
暗闇の中、平野さんと目が合う
心の奥でずっとくすぶっている、このどうしようもない想い
平野さんのことが好きなのに
優太なんてもう好きじゃないのに
それなのにどうして、
どうして、消えてくれないの。
思わず目をそらした私、平野さんの息遣い
そっと、またいつものように距離がなくなっていく
そして平野さんの熱い唇が、私の頬に触れた。
「………風邪早く治して。」
「じゃないとキス、できないから。」
私の唇を指でなぞるあなたの、
瞳の中で燃える炎
平野さんはそれ以上、何も言わなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1340人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「King&Prince」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
湊。(プロフ) - 初めまして。感想を書くのが初めてなので上手く伝えられないと思いますが読んでいただけると嬉しいです。しあさんの書く文章が言い回しが本当に好きです。こんな素敵な文を書く人がいるんだ、と本当に感動しました。この物語としあさんに出逢わせてくれてありがとう。 (2023年3月14日 21時) (
レス) @page27 id: 3a1c3da159 (このIDを非表示/違反報告)
如月すい - 完結おめでとうございます。3人の交差する思いに時に涙しながら読ませていただきました！これからも素敵な作品を作ってください❤️ (2022年10月27日 18時) (レス) @page27 id: 76527d2194 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - zzzさん» いつもありがとうございます！素敵な作品にだなんて言っていただけて本当に幸せです、ありがとうございます。ぜひまた読み返してみてください！またよろしくお願いいたします^^ (2021年7月15日 16時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - かいとんさん» ありがとうございます！！いろいろな感情になっていただけたみたいで、とっても嬉しいです。これからものんびり頑張りますね！本当にありがとうございました^^ (2021年7月15日 16時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - hasさん» はじめまして！いつもお読みいただきありがとうございます！今後もどうぞよろしくお願いいたします。またコメントお待ちしております^^ (2021年7月15日 16時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：詩愛
| 作成日時：2021年5月15日 9時
