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夏休み、前日
この頃の私は、もうベンチに行けなくなっていた。
明日から始まる大切な受験生の長期休み
やけくそで立てた勉強の計画表を睨みつけながら、ため息をひとつ
君が居ないと、
世界はこんなにも、つまらない。
泣き出したくなって、だけどそんなことできなくて
放課後、帰っていくクラスメートたちを横目に、
休み前最後の課題を、ゆっくりと見下ろした。
居残りがずいぶんと延びてしまって、外はもう暗い
疲れた頭を少し重たく感じながら、ひとりで学校を出た
いつもなら、まっすぐに家に帰るはずの時間
だけど今日は、なぜか、
君が、ベンチに居るような気がした。
私が疲れているから、私が君に会いたいから、
そんな風に都合良く考えているのかもしれないけれど、
でもなんだか、そんな気がするんだ。
電車に乗って、家の最寄りで降りて。
商店街を抜け、小学校を通り過ぎ、いつものベンチを目指す
辺りは暗くて、いつもと違う街に見えるほど
静かになった公園はまるで、私の心みたいに寂しかった
やっと見えてきた桜の木々の間、いつもの指定席
だけどやっぱりそこに、君は居ない。
「……さすがに、遅い、か。」
ぽつりと呟いた小さなひとりごと
夜のベンチには、ひだまりも何もなくて、
泣きたくなるほど、冷たく見える。
……疲れたな、今日。
少しだけ休もう。そう思って、いつもの私の席に腰を下ろす
すると、
いつも海人が座る方の座面に、何かが置いてあるのを見つけた
なんだろう。
暗闇の中、その小さな何かに手を伸ばす
そっと指先に触れたのは、何かの包み紙だった
「………これ、」
周りに灯りがなくても、それが何か、すぐにわかる
それは、海人と私が。
たまたま私たちふたりが好きで、いつだったか、一緒に笑いながら食べた、
あの、飴だった。
途端にいろいろな感情が、私に襲いかかる
海人、ここへ来たんだね。
明日から夏休みが始まる今日、
ひとりでここに、来たんだね。
君がこの飴を意図的に置いていったのか、それとも落としていってしまっただけなのか
私にはわからないけれど、
それでも君が、このベンチにこの飴を持って来たということ
それが、嬉しくて。切なくて。苦しくて。
「………海人、会いたいよ、」
そっと握りしめた飴は、
夏の暑さに、少しばかり溶け始めていた。
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詩愛(プロフ) - かいとんさん» ありがとうございます！お読み頂けて光栄です！またよろしくお願いいたします^^ (2021年3月19日 15時) (
レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
かいとん - 完結おめでとうございます！凄く暖かくわくわくする物語でした。高橋担なので需要しかないお話でした……！これからも頑張ってください！ (2021年3月18日 23時) (レス) id: fb912074b2 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - ひまわりさん» お久しぶりです〜！お読み頂いてこちらこそありがとうございました！あまり出来に自信がないのですが、そう言って頂けて嬉しいですT_T 今後もどうぞよろしくお願いいたします！ありがとうございました！ (2021年3月12日 17時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
ひまわり(プロフ) - 詩愛さんお久しぶりです！以前リクエストさせて頂いた歌を基に物語を書いてくださってありがとうございます！！とっても嬉しいです！また海人くんの物語楽しみにしています！ (2021年3月12日 1時) (レス) id: 1474a1813f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詩愛
| 作成日時：2021年3月2日 14時
