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そしてまた、この街に訪れた夏
私たちは、お互いに少しの不安を抱いたまま、
その日もまた、ベンチに座っていた。
ベンチの背もたれの後ろには、今年もたくさんのひまわり。
その大きく花開く黄色い色が目に染みて、
また、遠い昔の彼のことを、思い出してしまう。
「………ね、A」
ぼんやりと空を見上げていた私に、突然、
となりの君は声をかけてきた。
「……ん？」
「Aには、忘れられない人って、居る？」
あまりに急に。だけどずっと前からそのことが気になっていたような、君の聞き方
心の奥が、ぐっとえぐられるような、変な疼き方をする
頭に浮かんだのは、遠い日の彼の記憶。
あの子のことを、私はたしかにずっと覚えていて。
それを忘れられない人、というのなら、
海人の質問への答えは、わかりきっている。
答えられず、止まってしまう私たちの時間
海人のことが好きなのに、ふとした瞬間に、
あの頃私をあたたかく包んでくれていた、小さくて眩しい存在を思い出すんだ。
「……やっぱり、居るんだ。」
ぽとりと落とされた海人の言葉
千切れてしまいそうなほど細い、その声。
「俺、なんとなく気がついてたよ。たまになんか悲しい目するじゃん、Aって」
いつも通りのようで、いつもと全然違う話し方
揺れるその瞳は、一度も私を見ない
私はこの状況に喉の奥が詰まって、一言も言葉が出なかった。
「………でもさぁ、俺も人のこと、言えないんだよね」
突然、海人はそう言ってすっと空を見上げる
なんとなく、次に聞かされる言葉が、怖くて。
だけどそれが、真実で。
「………俺にも居るの、忘れられない女の子。」
ずしりと私の心を圧迫する海人の言葉
君の切ない視線も、横顔も、
すべてはその子への、想いだったのかな。
いつからか私たちは、幸せを追い求めていくうちに、
お互いの過去とその幸せを、重ねてしまっていた。
「……なんかさ、悲しいよね。俺ら。」
「………」
「今お互いを好きなのに、ずっと記憶に縛られてて。」
海人が未来ばかりを心配すること、
遠い何かを追いかけていること、
すべての理由が、その記憶の中にありそうで。
私たちは、前に進みたいのに、
記憶の中の人が、この手を離してくれない。
「……ごめん、なんかこんな話して。もう、帰ろっか。」
夕焼けの中、君はそっと、目を伏せた。
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詩愛(プロフ) - かいとんさん» ありがとうございます！お読み頂けて光栄です！またよろしくお願いいたします^^ (2021年3月19日 15時) (
レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
かいとん - 完結おめでとうございます！凄く暖かくわくわくする物語でした。高橋担なので需要しかないお話でした……！これからも頑張ってください！ (2021年3月18日 23時) (レス) id: fb912074b2 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - ひまわりさん» お久しぶりです〜！お読み頂いてこちらこそありがとうございました！あまり出来に自信がないのですが、そう言って頂けて嬉しいですT_T 今後もどうぞよろしくお願いいたします！ありがとうございました！ (2021年3月12日 17時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
ひまわり(プロフ) - 詩愛さんお久しぶりです！以前リクエストさせて頂いた歌を基に物語を書いてくださってありがとうございます！！とっても嬉しいです！また海人くんの物語楽しみにしています！ (2021年3月12日 1時) (レス) id: 1474a1813f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詩愛
| 作成日時：2021年3月2日 14時
