君とひまわりと私 K.T (ページ48)

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やがて春が来て、私たちは高校三年生になった。

桜がまた咲き始めた頃、

私たちは今日も、となりに座る

「今年も綺麗に咲いたね」

「ね、Aとはじめて会ったのも、もう一年前か。」

「そんなに経つんだ…」

「……なんかさぁ、ずっと前から一緒に居たみたいな気がしてんのは、俺だけかな。」

桜色の景色の中、君のその瞳が日差しを受けてきらめいた

そう、私もそう思ってた。

ふたり掛けのベンチの居心地の良さ、

一緒に笑った時のあたたかい雰囲気、

すべて、まるでずっと一緒に居たみたいな、安心感があって。

私も、そう思うよ。

そう言って君と目合わせようとしたけど、

君の視線はやっぱり遠く、

何か大切なものを、追いかけている。

「………海人？」

「……あ、ごめん、」

「謝らなくていいよ、最近疲れてる？」

「いや？あー、まあ勉強はちょっと大変だけどね」

やっと私と交わった視線、

その瞳には、切ない色がいっぱいに広がっていた。

「……なんか、手伝えることあったら言ってね、海人」

「んー？あ、そっか。A進学クラスだもんね。」

「あ、うん、勉強以外のことでも、ね」

「あれ。俺なんか、心配かけちゃってる？」

海人は、なんでもないよ！っていつもみたいに明るく笑うけど、

なんだかちょっと、やっぱりちょっと、

苦しそうに、見える。

私じゃ、頼りないかな。

「そろそろ帰る？家まで送るよ、A」

「うん、ありがとう、」

日が沈み出して、同時に立ち上がった私たち

まだ帰りたくない。いつもそう思うのに、

今日の海人は、まるで気持ちがここにないみたいで。

「……ねえ海人」

私の横で、自転車を押して歩く君を、呼んだ。

「はい、Aさん、なんでしょうか。」

「………今、何を考えてたの？」

明るく返ってくる返事に、

少しばかり緊張しながら、そんなことを聴く

するとその途端、君の目が、

ふらりと宙に、泳ぎ始めた。

「………ごめん、ちょっと。昔のこと。」

ゆっくりと、呟いた君

これ以上聴くなって、まるでそう言われているみたいで。

君の心の内を知りたいと思っていた私の気持ちは、

あっというまに、しぼんでしまった。

「じゃあ、また明日ね。」

「うん、送ってくれてありがとう。」

私は、幸せが増えていくたびに、

君の笑顔が、失われていくような気がしているんだ。