君とひまわりと私 K.T (ページ46)

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海人はたまに、そうやって悲しそうな顔をする時がある

私はある日、そんなことに気がついた。

「くれんの？俺に？」

「そう、海人のために作ったの」

あっという間にやってきた2月14日、バレンタインデー

私たちはその日もベンチに一緒に座っていて、

私がカバンから取り出した手作りのお菓子を見ると、君はその目を輝かせた

「ねえこれ、今食べていい？」

「いいよ、もちろん」

「ありがとう、すっごい嬉しい。ほんとに嬉しい」

丁寧に心を込めて作ったお菓子が一口、君の口の中に入る

直後、パッと目を見開いた君は、勢いよく私を振り返った

「え、ねえめっちゃ美味しいんだけど」

「ほんと？よかった！」

「俺のために、作ってくれたんだよね。」

「そうだよ、海人のためだけに。」

「……幸せすぎて、どうしよ、俺」

そう言って笑う君、なんだか懐かしい気持ちが心を満たす

その時ふと、君の目がまた、

遠い何かを、追いかけていることに気がついた

「……海人、どうしたの？」

「……えっ？あ、ごめん俺、」

なぜか謝って、慌てて私と目を合わせる海人

君が何かを、何か大切なことを、私と分け合っていない気がして。

少しだけ、心と心の距離を感じてしまう

たまに感じるこの私の切なさは、

君の儚い表情は、

一体、何を意味しているんだろう。

ホワイトデー、君は私よりも先にベンチに来ていた。

「A！ホワイトデー、お返し！」

たくさんの桜の囲まれた君は、今日もあたたかく手を振りながら、

駆け寄る私に向かって、大きく微笑む

「ごめんね、買ったやつなんだけど。」

「ううん、すっごく嬉しい。ありがとう、」

肩を並べて座る私たちの距離は、いつもよりも近くて、

触れ合う肩に、だけど触れない指先に、

心の奥が甘酸っぱく震えるんだ。

口いっぱいに広がる甘い味

それはきっと、世界で一番甘い、ふたりきりの時間

「……おいしい」

「よかった。おいしそ～と思いながら選んだからさ」

「私、やっぱりすっごい幸せだ。」

「………ねえどこにも、行かないでね。」

また、君は切ない顔で私を見た

幸せを感じる度に、君はその幸せにどこか怯えているみたいで、

どうしてそんなに、不安そうな顔をするの。

どうしてそんなに、未来を心配するの。

「行かないよ、どこにも。」

まっすぐに伝えた言葉に、

君はまた、弱々しく笑うだけだった。