君とひまわりと私 K.T (ページ44)

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やがて、夜も更けていく。

「もうそろそろ帰ろっか。」

だんだんと身体が冷えてきた頃、海人はそう言って、

そっと、音楽を止めた。

まだ一緒に居たいのに、もう帰らなきゃいけない時間。

「ねえもうそんな顔しないでよA」

「だって、すっごく寂しい」

「いやわかる。俺もだよ。」

海人は、すんと一度鼻をすすってから、私をゆっくりと見下ろす

「……だからAのこと、家まで送っていい？」

少し緊張気味な君の顔

君って、どうしてそんなに、

幸せなことばかり、言ってくれるんだろう。

「………うん、お願いします。」

「やった。じゃあ俺の自転車、取り行こ」

ふたりでそっと、イルミネーションにお別れをして。

冷たい空気に包まれたまま、

私たちはベンチをゆっくり、あとにした。

ふたりで歩き出した、真っ暗な世界

さっきまでの眩しいイルミネーションが少しだけ恋しいけれど、

となりに君がいれば、それだけで私は幸せで。

「寒くない？平気？」

「寒くないよ、海人も大丈夫？」

「俺も全然平気。ぽかぽかしてる」

「あ、ちょっとわかるかも。」

「ね！多分、さっきくっついてたからだよ。」

海人と体温を分け合うように、並んで座ったあのベンチ、

一緒に聴いたクリスマスソング、

目の前の綺麗なイルミネーションも、全部、

きっと一生、忘れないと思う。

自転車を押しながら、ゆっくりと私と歩幅を合わせる海人

その少しだけ寒そうな手を、いつか握りしめてみたい。なんて、

そんな甘い未来を、想像して。

だけど期間は、永遠じゃない。

やがて私の家の前、海人は立ち止まって、私と向き合った

「クリスマス、一緒に居てくれてありがと」

「私こそ、ありがとう。」

そっと目が合えば、ゆっくりとあたたかく微笑む君

「………もうこれからは、Aの頭の中、俺でいっぱいにさせちゃうからね。」

君は優しい顔で、そんな熱い言葉を放つ

だから私も、君に伝えよう。

「……もうずっと、海人でいっぱいだよ。」

そんな私の小さな声に、君の頬が染まり、

その瞳が、少しだけで大きくなった

「………そんな可愛いこと、言わないでよ。」

「俺もう、離したくなくなっちゃうじゃん、」

海人の視線が、どぎまぎと泳ぐ

だから海人、

「私のこと、離したりしないで。」

「………ばか。ほんっとずるいよ、」

夜がそっと、深まっていく。