君とひまわりと私 K.T (ページ28)

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そして、夏休みが始まる前日

「A～！！見て！！」

先にベンチに来ていた海人が、私を見つけて叫ぶ

急いで駆け寄ると、君はたくさんのひまわりに囲まれていた

「え、すごいひまわり、」

「やばいよね！昨日も綺麗だったけど、今日の方がやばい！」

大きなひまわりたちが、まるで私たちの時間を彩ってくれているみたい

「どう、A！！すっごい素敵でしょ」

「うん、とっても綺麗、」

無意識に握りしめたスカートの右ポケット

彼のことを、思い出す。

なぜだかちょっと、泣いてしまいそうだった

「……俺ね、ひまわりっていう花に。結構、なんだろ。思い入れ？があって。」

ぽつりぽつりと話し始めた海人の横顔は、

初めて会ったあの日のように、少しだけ、切なそうで。

「大切な花なんだ。俺にとってひまわりは」

少し瞳を潤ませる君を、

急に、抱きしめてしまいたくなる。

「あのね海人、実は私も、ひまわりに思い出があって、」

「え、Aも？」

「うん。だから、海人の気持ち、ちょっとわかる気がする」

「……そっか。なんか俺らって。いろいろ似過ぎてんな」

「ね、私もそう思う」

君のひまわりの記憶が、どんなものか知らないけれど

私と作る新しいひまわりの日々が、

どうか、その記憶よりももっと。輝きますように。

やっと腰を下ろしたベンチの周りは、鮮やかな黄色一色

その眩しさに目を細めながら、私たちは今日も、時間を分け合っていく

「てかさぁ、俺明日から夏休みなんだけど。Aの学校も？」

「うん、私も明日から。」

「お、一緒じゃん！いい思い出作んないとだ」

「だね、」

会話の途中、頷きながら、少しの不安が生まれた

夏休み中、海人はここに来るのだろうか。

私たちは毎日ここで会ってはいるけれど、

まだ、ちゃんと待ち合わせをしているわけではなくて。

夏休み、会えなかったらどうしよう。

そんなことを考えて、スカートの裾をそっと握りしめる

するとその時、

「ねえ、Aの連絡先、教えてほしい。」

海人の声が、私の耳に入り込んできた

「……連絡先、」

「あ、断るとかなしね。夏休みもAは、俺とここで会うの。」

君の、真剣な眼差し

ちょっと積極的だけど、全然嫌じゃない

嬉しくて、急いでケータイを取り出した

「うん、夏休みも、会おう」

「約束ね？A」

目が合うその瞬間ですら、愛おしい。