君とひまわりと私 K.T (ページ25)

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ベンチの前、私のとなりに、君。

「今日もすっごい降るね、雨」

「そう、だね」

「なんかさ、遠くない？こっちおいでよ」

海人がそっと、手招きをする

近付いて傘を畳めば、大きなその傘の下で、君と目が合った

「……良かった、今日も会えて。」

海人のあたたかい笑顔を見ていると、帰ろうとしていた自分がとても嫌になって。

「ごめんね海人、私、」

「謝んないでよ。会えたんだから、もうなんでもいいでしょ」

優しい眼差し、笑顔

こんなに純粋な気持ちに触れたのは、久しぶり

一緒に居て、視線を合わせるだけで、

固まっていた心が溶けて、あたたかい幸せが染み込んでいく。

「早く夏来ねえかなぁ。俺は早くひまわりが見たい」

「ひまわり、私も見たいな、」

「俺ら一緒に見る約束したもんね！楽しみですな」

眩しく笑う海人は、泣きそうだった私にその理由を聞いてこなかった

私を優しく見下ろして、決して問い詰めたりしない

どれほどその接し方に、救われただろうか。

「……もう、暗くなってきちゃったね。」

そのうち街灯が灯りはじめて、海人が言う

帰らなきゃいけない、でもまだ海人と離れたくなくて。

そんなことを思った自分に驚いていると、

「Aんち、どこ？もう暗いし、俺が送ってく。」

そんなことを、言い出す君。

「……いいの？」

「もちろん。帰ろ、俺と。」

きらりと微笑む海人の眩しさに、また泣きたくなった。

ふたりで、肩を並べて歩く帰り道

いつも通っているはずの道なのに、今日ばかりはすべてが新鮮で

それはきっと、君のせい。

「いや～俺の家と全然方向、真逆ですわ、残念」

「真逆なのに、ありがとう」

「いやいや。Aのためだったら、ね。」

傘の向こう側の君と、一瞬だけ、目が合う

この時間が、ずっと。終わらないでほしかった。

「ありがとね、こんなところまで」

家の前、傘をさした海人に向き合う

君はまた、笑った。

「どういたしまして。どう、ちょっとは元気出た？」

「……うん、ありがとう」

やっぱり海人、私の様子に気がついてたよね。

すると君が、そっと私に近寄ってくる

「こういう雨の日も、さ。意外といいかもって、俺今思った」

「……どうして？」

「おんなじ傘に、入れるから。」

海人、君はどうしてそんなにあたたかいの。

むふふ、と咲いたその笑顔に、

私まで、笑ってしまった。