君とひまわりと私 K.T (ページ19)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:109,235 hit

19 ページ19

・

そしてまた、別の日の放課後

今日もゆっくり、私はいつものベンチへと向かっていた

公園を歩いていると、ポケットの中でケータイが震える

友達がいない私に連絡してくるのは大体いつも両親のどちらかで。

すぐに確認しようと思って、ブレザーのポケットからケータイを取り出した

するとその拍子に、

「……あ！」

同じポケットに入っていたあのお守りが、

勢いよく飛び出して、公園の草の上に落ちる

「……危なかった、」

すぐ横にある側溝が目に入って、

落ちなくて良かった、と、ふっと息を吐いた

一瞬どきりとした胸を抑え、お守りを拾うためにそこにしゃがみこむ

すると今度は、

「……あ、」

拾おうとしたお守りのすぐ横に、

四つ葉のクローバーが生えているのを、見つけた。

「すごい、本物…？」

確かめると、しっかりと地面に根を這っているそのクローバー

人生ではじめて見つけた、四つ葉。

なんだか嬉しくなる。そしてこの嬉しさを、

君と、分け合いたくなった。

私はそっと、その四つ葉のクローバーを摘んでからお守りを拾い上げ、

ベンチに向かって、走り出した。

だけどベンチには、まだ君は居なくて。

それなのに気持ちがずいぶんと高揚していた私は、落ち着いて座って待っていることもできない

しばらくうろうろとベンチの前を歩き回っていると、

「A～！」

やっと。やっと君が駆け寄ってくる。

柔らかいその笑顔を見て、もっと嬉しくなって。

「海人、見てこれ！」

「ん、なに？あ、え！え？！すげえ！！」

すぐさま海人に見せたクローバー

君はもともと大きなその瞳を、もっと大きくして輝かせる

その表情を見てふと、あることを思いついた

「ね、海人、」

「ほんとすごいよこれ、ん？どした！」

「これ、海人にあげる。」

「え？」

突然そんなことを言い出した私を、海人がぽかんと見下ろす

だけど、どうしても受け取ってほしくて。

「海人にあげたいの。幸運の、四つ葉のクローバー」

まっすぐに見つめたその瞳

ねえ、受け取って。海人。

やがて君はゆっくり頷いて、微笑んだ。

「………ありがと。じゃあ俺は！この幸せのクローバーをもらった以上の幸せを、」

「Aに。あげるからね。」

今度は君が、私をまっすぐに見つめる

その瞳から目が離せなくて。

これ以上の幸せがあるのかな、なんて

そんなことを、考えてしまった。