137 ページ39
・
夏が近付く、近付く。
私は以前よりももっと、親との関係が壊れていくのを感じていた
もともと少なかった会話も、ゼロになってしまって、
すべての感情を失ったような、色あせた世界が私を待っていた
それでもやっぱり、夏は近付く、近付く。
君と一緒に歩く通学路も、
みんなで笑い合うお昼休みも、
あと少しで、すべて思い出になってしまう。
だけど私は、まだ現実を受け入れられなくて、
岸くんにも、君にも、誰にも、
引越しのことを、言い出せずにいた
「夏、近いね」
「ほんと最近あっついよなぁ」
いつものみんなと学校を出て、駅に向かう
今日も君は、なんとなく私のとなりにいた
「夏休み何すっか」
「またみんなで集まりたいねー」
「去年何したっけ？」
だんだんと盛り上がっていく、夏の話。
私のいない、夏の話。
「廉は？何したい？」
突然話を振られて、君が自転車の車輪から顔を上げる
「………特にないわ」
「今日もめちゃくちゃ塩対応だなおい」
みんなは笑うけど、私の心には、その言葉が突き刺さった
夏にしたいこと、ないんだ。廉くん。
もう夏なんて、君にとっては、
過ぎ去っていった数多くの季節のひとつでしか、ないのかな。
「………A？」
突然名前を呼ばれて、ふと顔を上げる
岸くんが、私を見ていた
「……なに？」
「なんか今日、元気なくね？」
「俺もそれ思った」
「Aなんかあったの？」
岸くんの一言で、みんなの注目が私に集まる
言わなきゃいけない。いつか言わなきゃいけない。
だけどまだ、
みんなに言えば、本当に壊れてしまいそうで。
「………気のせいじゃない？」
そう言ってまた、口角を不自然に上げることしかできない。
「そうかー？」
「なんかあったら言いなね」
「うん、みんなありがと、」
そしてまた、夏の話が始まった。
ちらりと見上げたとなりの君は、どこか遠い目をしていて、
やっぱり私と、目が合わない
言葉数の少ない君
今日も君は、私に何も声をかけなかった
今までは気にならなかった君のそんな態度も、
今日ばかりは、悲しくて。苦しくて。
少しくらい心配、してくれてた？
少しくらい私のこと、気にしてくれてた？
そんなことですらもう、
聞くことが、できなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1056人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「King&Prince」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
詩愛(プロフ) - みあさん» 遅くなってしまってすみません…！ぜひ続きもお楽しみに！！ (2020年10月8日 21時) (
レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
みあ(プロフ) - テスト終わり久々にこの作品に戻ってきたら、つい泣いてしまいました笑 今後の展開が楽しみです！ (2020年9月5日 0時) (レス) id: 985d7c4caa (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - 駿さん» お読み頂きありがとうございます！今後どうなるのかぜひ楽しみにしていてください！更新頑張ります^^ (2020年9月1日 15時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
駿(プロフ) - 廉くん全然来ないし今までも冷たいから「ばか！！」って言いながら見てました！！！（やめとけ）ハッピーエンド願ってます(TT) (2020年8月31日 23時) (レス) id: c2f4c5f056 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - はなさん» 読んでくださってありがとうございます！嬉しいです……どうぞ今後の展開も楽しみにお待ちくださいね！楽しんでいただけるように頑張ります^^ よろしくお願いいたします！ (2020年8月31日 11時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：詩愛
| 作成日時：2020年8月16日 13時
