94 ページ45
・
「じゃあ次、誰歌う〜」
部長さんのそんな声に、手をあげたのは、
「俺、歌ってもいいですか？」
君だった。
途端にまた永瀬くんの時みたいに、歓声があがる
君のその目が、なんとなく真剣で、
“廉には、譲れないから”
そんないつかの君の言葉を、思い出した
紫耀くんが入れた曲は、ラブソング。
誰もが知っているような、有名な片想いの歌
君が、少し目を伏せてから歌い始める
その歌声は、永瀬くんに負けないくらい、
透き通っていて、美しくて、
切なかった。
歌詞が、今の紫耀くんの恋愛にぴったりで、
君のその気持ちを知っている私は、
なぜか、涙が溢れそうになるんだ。
ふと気になって目を向けると、はなみちゃんも、
君のその横顔を、見ていた。
ああ、やっぱり私には、
最初から、無理だったのかな。
紫耀くんは歌いながら、視線をふらりと動かして、
はなみちゃんを、真っ直ぐに見つめる
視線を絡ませたまま、君はその子へと歌い続けて、
それ以上見ていられなくなった私は、
君だけを見ていたこの目を、
何も見なくて済むように、そっと。
そっと、閉じた。
目を閉じると、となりに座っている永瀬くんの体温が
さっきよりも感じられて、安心してしまう
たとえあの子に向けて歌われている歌だとしても、
目を閉じれば、それもわからない。
君の声だけに、集中できる。
「………A？」
真っ暗な世界、永瀬くんの声がかなり近くから聞こえた
「………起きとる？」
「起きてるよ」
「そっか。ならええけど」
私は君の歌が終わるまで、目をぎゅっと閉じたままでいた
「いや、永瀬もうまいけど平野もうまいな」
「今年の1年レベル高いね〜」
「ありがとうございます笑」
「じゃあ次、部長行っときましょ」
「え？俺この後に歌うの？」
永瀬くんの指名に、わっと笑い声が響いて、
もう大丈夫かなって、目を開いた私
だけどそれが間違いで、
目を開けた瞬間に飛び込んできたのは、
部屋の隅、はなみちゃんの髪を耳にかけて、
そっと何かを耳打ちしている、君の姿だった。
“もっとアピールしてくことにする”
そう言っていた君
今まで見たこともなかったその近すぎる距離に、
何かが、崩れた
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1319人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「King&Prince」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
詩愛(プロフ) - zzzさん» いつもありがとうございます！ドキドキしてくださっていますか、よかったですT_T 続きもぜひ読みにいらしてくださいね！お待ちしております^^ (2020年5月29日 20時) (
レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - kaiさん» いつもありがとうございます！日課だなんて嬉しいです……精一杯頑張って書きますね！続きもぜひ読みにいらしてください！^^ (2020年5月29日 20時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - 涼杜兄妹さん» ありがとうございますT_T 引き続き皆さんのコメントを糧に頑張ります！ぜひ続きも読みにいらしてくださいね！よろしくお願いいたします^^ (2020年5月29日 20時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - 夜木さん» いつもありがとうございます！嬉しいです……これからも精一杯頑張りますので、続きもぜひ読みにいらしてくださいね！またよろしくお願いいたします^^ (2020年5月29日 20時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - まいさん» 毎日おつかれさまですT_T 少しでもお仕事の疲れがとれるように、私も頑張って更新しますね！続きもぜひ読みにいらしてください！よろしくお願いいたします！^^ (2020年5月29日 20時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：詩愛
| 作成日時：2020年5月4日 19時
