175 ページ28
・
「………あーあ。」
夕日が窓から差し込む頃、
私とぴったりとくっついていた君が、声をあげる
「全然作業進まなかった。」
「………当たり前でしょ、あんなこと始めるから」
見上げた君は、少し気だるそうで。
さっきまでの艶っぽい表情とは、別人に見えた
「じゃあ今からもう少しだけ作業する？」
「いやもうそういう気分でもないな」
君は私の髪にするすると指を通して、ぐっと距離をつめる
くすぐったくて、でも幸せで。
ずっと一緒にいようね。
思わずそんな言葉を、言いそうになった。
私たちには、時間がないのに。
「………俺はまだここにいるよ。」
私の表情を見て、君は言う
「………うん、そうだよね。」
「そう。だから今は、俺のことだけ考えて？」
「わかった、」
私が返事をすると、君はやわらかく微笑んだ
こんな時間が、続けばいいのに。
そのあともずっとくっついたまま、私たちは話をした
そんな時間が、もしかしたら今までで1番、
幸せな時間、だったかもしれない。
「じゃあ、帰ろうかな」
「そっか」
空が真っ暗になる前に、私は君に声をかけた
素っ気なく返事をした君だけど、
その目が少し揺れたこと、気がついてたよ。
「じゃあ、気をつけて。」
「うん、いろいろありがとう。お邪魔しました」
玄関先で私と向かい合う勇太が、やっぱりまだ寂しそうだったから、
「………バイバイのキスね、」
そう言って背伸びをして、君にそっと、キスをした。
離れると、君がふう、とため息をつく
「………Aも、かなりいじわるだね」
「そうかな？」
「もー、ほんとに、」
そう言うと君は突然、靴を履きだした
「やっぱり、駅まで送るから。」
ふたりで出た外の空気がなんだか心地良くて、火照った体を冷やしていく
「もう、あと少しだよね」
君の、新しい生活まで。
「うん、そうだね、」
見知らぬ街でひとりなんて、
きっと、不安だよね。
君の横顔を見上げて、そう思った。
「………どした？」
じっと見つめる私の視線に気がついて、君が笑う
寂しいなんて、やっぱり言うべきじゃない。
君の夢だし、君が進もうとしてるのに。
「……なんでもないよ。」
少し暖かい風の吹く夜、
私は首を、横に振った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 536人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「King&Prince」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
詩愛(プロフ) - びてさん» わ！ありがとうございます嬉しいです！！見つけてくださりありがとうございます！コメントとっても嬉しくてまた意欲が湧いてきました^^ ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします！ (2021年12月12日 17時) (
レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
びて(プロフ) - 気がついたら一気読みしてしまいました…！胸がぎゅっと締め付けられるような、切ないストーリー、思わず泣いてしまいました…！！素晴らしい作品をありがとうございました…！作者様の作品、全部大好きです…！これからも応援しております〜！！ (2021年12月11日 21時) (レス) @page50 id: c945aa9546 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - zzzさん» こんばんは！読んでくださってありがとうございました！これからも頑張りますね、引き続きよろしくお願いいたします^^ そしてもう一度、フォローもありがとうございました！ (2020年4月27日 18時) (レス) id: 00cf9e51b5 (このIDを非表示/違反報告)
zzz - 蒼く染まれ。気づいたらイッキ読みしていました。人物像を似せて文面を考えるのって、とてもとても難しいと思いますが、本当に素敵な作品でした。ツイッターもフォローさせてください。他の作品も楽しみにしてます。 (2020年4月26日 18時) (レス) id: f5724e95b1 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - さくらさん» ありがとうございます！表現するのがなかなか難しかったのですが、そう言って頂けて本当に嬉しいです泣 どうぞ次のお話も楽しみにしていてください！ありがとうございました^^ (2020年4月16日 11時) (レス) id: 00cf9e51b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：詩愛
| 作成日時：2020年3月31日 18時
