蒼く、染まれ Y.J（２） (ページ8)

今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:120,219 hit

57 ページ8

・

「うわ、すごいな」

たどりついたイベント会場

入り口に立った君は、驚いたように声をあげた

「もうなんか、すごいよ。チョコの匂いしてくる」

「ね、すごく甘い匂い」

応えた私の声が興奮気味にうわずって、君がパッと振り返る

「……テンション、上がってる？」

君はにこにこと私に問いかけた

「………うん、だっていっぱいチョコ食べられるんだもん」

「もうね、目がキラキラしてる」

そういう神宮寺くんの目もキラキラと輝いていること、知ってるかな

「行こうよ、あれおいしそう」

「Aちゃん、すっごい楽しそう笑行こっか」

私たちは、笑い合いながら会場に足を踏み入れた

・

「ん～～これすごいおいしい！」

「見た目もすごい綺麗だし、いいね」

私たちはとりあえず気になったチョコ菓子を少しずつ食べて行くことにした

小さなお菓子をつまみながら、お店が並んでいるところを歩く

周囲には甘い魅力的な匂いが満ちていて、

隣には君がいて。

「……幸せ、だな」

ふと、そんな言葉が溢れると、

「………なんて？」

君がいたずらっぽく私の顔を覗き込んだ

「もう一回、聴かせてよ」

「………えー、」

聴こえてたなら、わざわざ聴き返さなくてもいいのに、

君は私を見つめたまま。

「………何も、言ってないよ、」

その視線に耐えられなくて、目をそらした私は、

手に持っていたミニケーキを頬張った

「それは残念」

君はちょっと眉毛を下げて笑う

「………神宮寺くん、これおいしいよ」

話題を変えようとミニケーキを持ち上げて君を見上げると、

「………ちょっと、ごめんね」

君の顔がふわっと近くなって、

その指がそっと、私の唇をなぞった

「……チョコクリーム、ついちゃってた」

指についたクリームを私に見せてから、至近距離で微笑む君と、

突然のことに、動けない私。

君は指についたクリームを、そのまま自分で食べてしまう

「………ほんとだ、めっちゃおいしいじゃん」

マンガで見たことのあるような、君のそんな行動に

私の心臓は、壊れてしまったみたいにうるさい

神宮寺くんはフッと笑って、

「俺、次あれ食べたいんだけど」

そう言って視線を横のお店へと向けた