蒼く、染まれ Y.J（２） (ページ48)

今日:3 hit、昨日:4 hit、合計:120,217 hit

97 ページ48

・

結局私たちが選んだのはまた居酒屋

お店の前で待っていると、顔をくしゃくしゃにしながら現れた岸くん

「おまたせ！！！」

「大丈夫、あんまり待ってないよ」

「マジ、よかった。入りますか！」

いつも元気な岸くんは、落ち込むことってあるのかな。

突然そんな疑問を抱きながら、私は岸くんの後についてお店に入った

席について、メニューを2人で見る

「飲んじゃおうかな～～」

なんてご機嫌な岸くん

「私、今日は飲まないね」

そう言ってソフトドリンクのメニューを見始めた私に、彼はうなずいた

「いやそれね？マジそうして」

「ごめんねほんとに、この前は……」

途端に思い出す、前回の居酒屋の時の失態

「いや別に俺は気にしてねーけど、」

「あんな怖い神宮寺、もう見たくないんで！」

やっぱり、そうだよね。

岸くんはメニューに視線を戻す

前回は、岸くんだけじゃなくて、

君にも迷惑、かけたもんね。

″次は神宮寺くんには連絡しないね″

あの日の自分の言葉を、思い出す

連絡しなければいいだけで、

今日だって、飲んでしまえばいいのに

なぜか私には、それができなかった。

普通に生活して、他の人といるのに、

君のことが浮かんで、気にして。

だめだなぁ、やっぱり。

君のこと、すごく気にしてる。

「おーいA？ちょっと戻ってきてマジ」

岸くんの綺麗な手が、私の顔の前でひらひらする

「………あ、ごめん」

「なに、神宮寺のことでも考えてたの」

突然また聞かされたその名前に、思わず肩が跳ねた

「………」

「…えっ、…えっ！！！ストラーイクッ！！バッター、アウトォ！！！」

「うるさいからやめてよ、」

突然騒ぎ出した岸くん

「しかも何、ストライクって、」

「図星って言いたかった！！！」

「お酒入ってるの…？」

楽しそうな岸くんを見ていると私まで笑ってしまう

彼の人柄もあってか、岸くんとは割とふざけあえるし、

なんでも話せる仲だと勝手に思っていて、一緒にいて本当に楽だ。

神宮寺くんといるのも楽だけど、

岸くんとの時は、神宮寺くんの時ほど、どきどきと緊張することもないし、

「じゃあ注文すっか」

「うん、しよ」

心臓が、ぎゅっと縮まることもない。