蒼く、染まれ Y.J（２） (ページ31)

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次の日の朝、私は心を込めて作った手作りのクッキーを持って教室に入った

これを、神宮寺くんにプレゼントする、計画。

だけど、いつ、渡せばいいんだろう。

なんとなく迷ったまま過ぎていく今日という日

授業をこなし、お昼休みが過ぎ、

今日に限って2人きりの時間はまったく無く、すぐに放課後になってしまった

「「さようなら～」」

ついに帰りのホームルームが終わってしまって、焦る

するとそこで、私たち2人を、担任の先生が呼んだ

「今日はこのプリントの仕分け、よろしくね」

どっさりと渡された紙の束

「わかりました」

今日ばかりは、この雑用に感謝してしまう

いつものように、机をくっつけて作業を始める私たち

「……Aちゃん、」

ふいに君が、私を呼ぶ

「…ん？」

「今日なんか、緊張してる？顔がね、ずっとかたまってる」

そう言って笑う君は、今日も眩しかった

「あ、うん、ちょっとね、」

渡すなら今。今しかない、よね。

そっか、と、視線をプリントに戻す君に、

「あの、神宮寺くん、」

私から、声をかけた

顔を上げて私を見つめるその数秒間が、愛おしい

「あの、これ。神宮寺くんに、渡したくて、」

カバンから取り出した大切なクッキー

君が小さく、えっ、と声をもらした

「俺に？くれるの？」

「……そう。あ、クッキー嫌いだったら、無理しないで、でも作ってみたから良かったら、って思って、でも、」

「ねえ、待って」

焦って早口になる私を、君が止めた

ちりりと小さく、視線が交わる

「……俺、こんなのもらったら期待しちゃうよ？」

君のその視線が熱くて、胸がどきどきと痛む

期待しても、いいよ。神宮寺くん。

「……うん、」

頷いてクッキーの袋を差し出す私

君はそっと私からそれを受け取ると、

「いただきます」

袋からひとかけら取り出して、小さく、かじった

「どう、かな、」

しばらくして、君は私とまた目を合わせる

「………あのね、めっちゃおいしい、」

ほっと広がる、安心感

「よかった、」

にっこりと微笑む私を見て、君も幸せそうに笑う

「ほんとにおいしいよ。俺のために、ありがとう」

君への、心を込めた大切な想いが、

通じた、気がした。