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「…………A、」
もやもやとした頭の中に響く、私を呼ぶ声
あれ、何してるんだろう今。
たしか岸くんと、飲みに行って、
「A」
「………岸、くん？」
その名前を呼んでゆっくり目を開くと、
「………岸くんが、よかった？」
神宮寺くんが、私の目の前にいた。
「神宮寺くん、」
「………やっと、目覚めたみたいだね」
混乱した頭で周りを見回すと、
そこは居酒屋の近くの公園
ベンチに座る私の肩を、隣の君が抱きかかえていた
「岸くんから連絡あって、俺が迎えにきたの」
「…………」
「飲みすぎんなよ、男と2人で」
「………関係ないでしょ、」
夜の闇の中、君を見上げるとその目が揺れる
「彼氏面、しないで。」
はっきりと口にすると、神宮寺くんは視線を落とす
肩に回された腕の力が、強くなった
「………彼氏じゃないけど、心配なんだよ。そういう危ないことすんのやめろよ」
君が強めの口調で苦しそうに言うから、少しだけ、私まで苦しくなる
もう、恋人なんかじゃないのに。
「………帰る」
回された君の腕を振り払うと、私はふらりと立ち上がった
すると、慌てて君も立ち上がる
「送るから」
「………やだ、」
「危ないつってんの。言うこと聞いて」
歩き出した私の腕をつかむと、君はほぼ強制的に私に隣を歩かせる
なんでちょっと、どきっとするのかな。
私の家をまだ覚えているのか、君の足はまっすぐにそこへと向かう
「………なんか欲しいもんある？」
コンビニが見えてきた時、神宮寺くんが私に聞いた
「………水、飲みたい」
ふらふらした足取りの私を、コンビニの前のベンチに座らせると、
「買ってくるから、待ってろよ」
そう言ってコンビニへと入っていく君
そのロングコートのすそがひらめくのを、じっと見送った
「はい、お待たせ」
数分後、君はレジ袋を持って出てきた
「ありがとう、」
差し出された水のペットボトルの冷たさが心地良い
「………あと、これ、」
君がもうひとつ、袋から取り出したもの。それは、
「………なんでチョコ？」
困惑する私に、君は少しだけ笑った
「好きだったでしょ、これ。後で食べて」
渡されたチョコのお菓子
君はやっぱり、
そうやって、記憶をたどるんだね。
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作者名：詩愛
| 作成日時：2020年2月19日 15時
