蒼く、染まれ Y.J（２） (ページ29)

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そんな私たちの蒼色の記憶

その大切な一部であるギターを、

君がまだ使っている、という事実に胸が締め付けられる

「俺こいつほんとに気に入ってるんだよね」

そう言った神宮寺くんは、優しくギターを見つめていた

「そう、なんだ、」

返事が見つからなくて、言葉につまる

「あの時、Aが俺のこと蒼いって言ってくれたの、すっごい嬉しくてさ」

君はギターから目を離さずにぽつりぽつりと話し出した

「蒼色って、すごい綺麗じゃん。俺、その日から蒼色見るたびにAを思い出すようになっちゃったし」

そう、だったのか。

「その日から俺の毎日は蒼色に変わったんだ。それに、」

君がそこで、ふっと息を吐く

「俺らが過ごした時間も全部、蒼かったなぁ、って。」

目を細めて、寂しそうに少しだけ微笑む神宮寺くん

君も、同じことを思っていたんだね。

やっぱり、私たちの日々は、蒼かった。

今更、同じ気持ちだってわかっても、

遅いかも、しれないけれど。

黙り続ける私を振り返った神宮寺くんは、

「……まあ、そう思ってた時期も。あったんだよね」

今はもうただの記憶。まるでそう確認するかのように、寂しく呟いた

「…………」

「ごめんね、なんかこんな話して」

君は手に握っていたおにぎりの袋をくしゃりと丸めて、レジ袋に入れる

「もう遅いし、帰ろっか」

「………うん、」

神宮寺くんは少しだけ微笑んで立ち上がると、ギターを丁寧にケースにしまった

すぐに寒い冬の街に出た私たち2人

「まじで寒いね、この時期」

はぁっと白い息を吐く君は、あの頃よりやっぱり背が伸びたよね

見上げた角度が少しだけ、違う気がした

冬の夜は寒くて、ぎゅっと誰かにくっついていたくなる

きっと寒さのせい、寒さのせいだけど、

もう少し、この距離を縮めたくなった。

「今日は差し入れありがとね」

「あ、うん、どういたしまして」

ねえ君は、私たちのこの距離感を、どう思う？

「コンビニのもいいけど、今度は手料理がいいな」

「え、どうして、」

「だってA、料理うまいじゃん」

縮まりそうで縮まらない

そんな私たち2人は、

あの蒼い記憶をたどりながら、

肩を並べて、歩き続けた。