蒼く、染まれ Y.J（２） (ページ28)

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私たちは他にもいくつかのギターを試した

だけど、最終的に君が選んだのは、

「………最初のにしようかな」

あの、蒼色のギター。

「あれすっごい弾きやすかったんだよね」

「素敵な音だったよ」

うなずく私に、君は嬉しそう

「お決まりですか？」

店員さんは、まるで最初からわかっていた、とでも言うかのように、

蒼色のギターを、神宮寺くんに差し出した

「はい、これにします」

「ありがとうございます」

目をキラキラさせながら店員さんのあとについて会計へと向かう君

その背中が、眩しかった

「ありがとうございました！」

店員さんの声を受けながら真新しいギターケースを背負った君と、お店を出る

「ほんとにありがとね、Aちゃん」

「ううん！良かったね、いい楽器見つかって」

「ね？Aちゃんのおかげだよ」

私を優しく見下ろして、ちょん、と肩で私の肩をこづく神宮寺くん

小さく揺れた、私の体

幸せ、だった。

別にこの時は付き合っていたわけでもなんでもなかったけど、

こうやって、いつのまにか大切になっていた君の、大切な夢を、

1番近くで応援できて、1番近くで見守れること。

そのことが本当に、本当に。幸せだったんだ。

電車に乗り込んで、つり革につかまる私たち

そこで神宮寺くんは、私にこんなことを聴いてきた

「Aちゃんはさ、なんで、ぱっと見でこのギターがいいかもって思ったの？」

窓の外の景色を眺めていた君が、私を見る

「………笑わない？」

「うん、笑わない。聴かせて？」

なんとなく、言うのが恥ずかしいけど。

君が真剣な顔で私を待つから、

言ってみようかな。そう、思った。

「……神宮寺くんは、あのギターみたいに蒼いイメージがあるの」

「ただの青じゃなくて、綺麗な、蒼」

私の言葉を聴いて、君はふんわりと口角を上げる

「………蒼、か。なんか、嬉しいかも」

そう。君は、蒼だった。

その決して冷たくない、涼しい視線とか、

落ち着いていて優しいところとか、

さらりとクールに気遣いができるところとか、

夢に向かってこっそりと着実に、駒を進めていくところとか。

私の目には、君は蒼く、映っていた

そしてそんな君と過ごした私の毎日も、

綺麗に澄んだ、蒼色だった。