75 ページ26
・
「この後、用事ないって言ってたよね？」
腕時計を見ながら私に確認する神宮寺くん
「ない、よ」
「よかった。もし平気なら今から一緒に楽器屋さん行けないかな？急でほんと申し訳ないんだけど」
本当に、急すぎる誘い
だけど、
君が、私を選んでくれたことが嬉しかった。
また2人きりの、私たちだけの時間が増えることが、嬉しかった。
「もちろん、一緒に行きたい」
やっと応えた私に、神宮寺くんはにっこり微笑む
「うわ、まじで嬉しい。ありがとう」
「ううん、私こそ誘ってくれてありがとう」
「どういたしまして。じゃ、行こっか」
私たちは音楽室を抜け出して、昇降口を目指した
・
駅までやってきた私と神宮寺くんは、数駅先の楽器屋さんに向かうために、電車に乗り込む
2人で並んで座ると、いつもより距離が近くて緊張した
「……いい楽器に出会えるといいな」
「きっと。出会えるよ」
君の言葉にすぐに反応すると、
私と目を合わせてにこっと笑うその顔が、眩しかった
「でも、神宮寺くん。楽器って高いんじゃない？」
ふと気になってそんなことを聞くと、君は得意そうな顔をする
「実は、ずっと前からギター買いたくてさ、かなり貯金頑張ってきたんだよね」
その気持ちの強さを、思い知った
「このために貯めてきたお金だから、使ってあげなきゃ」
わくわくと、ほころぶ君の表情が、
夢で満ち溢れていて、私はまた嬉しくなる
この人の夢を、応援したい。
改めて強く、そう思った
・
電車を降りて、駅から出て、
少し歩くと現れた、ギターの品揃えが多い楽器屋さん
「なんか緊張するな〜」
と、言いながらも口角が上がりっぱなしの君の後について、お店に入った
「………すごい数、」
「やばいねこれ。テンション上がる」
お店に入ってすぐに見えた、たくさんの楽器たち
どれもキラキラと輝いていて、僕を奏でてよ、とひしめきあっている
いろんな夢が、ここにたくさんあるんだ。
なんとなく、そう感じた
「うーわ、やばい」
君の足は、ギターがたくさん置いてある方へと向かう
「ね、Aちゃん、どれがいいかな」
興奮して私を振り返る神宮寺くん
「え、どれかな、」
急いで店内を見回した私の目に、
「……あ、」
奥の、蒼色のギターが、飛び込んできた
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 447人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：詩愛
| 作成日時：2020年2月19日 15時
