蒼く、染まれ Y.J（２） (ページ25)

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約束の放課後はあっという間にやってきた

「さようなら～」

ホームルームが終わってみんなで挨拶を済ませると、君と一瞬目が合う

″先行ってるね″

まるでそんな風に、ぱちりと瞬きをした君は、

「じゃ、俺急ぐから帰るわ」

と、周りの男子に手を振った

「え、神宮寺帰んの？」

「つまんねー」

文句を言う男子たちに、笑いながら応える神宮寺くん

「すっごい大事な用事だから、ごめんね」

爽やかに笑ってみせる君の様子に、ますます騒ぐ周りの子たち

「え、なんだよデート？！」

「まあ、勝手に想像しといてよ」

否定、しないんだ。

そんな君の言動ひとつひとつに、心を揺さぶられる私

「じゃ、俺行くね。また明日」

男子たちをおいて、君は教室を出て行った

その背中を少し目で追って、君が音楽室の方に向かうのを見届ける

私も、行かなきゃ。

荷物を適当にまとめてカバンにつめると、私も君を追って教室をあとにした

音楽室の前に着いて、こっそり小窓から中をのぞく

教室の隅の方の机に座っている君を見つけて、ほっと安心感が広がった

そっと教室のドアを開けると、神宮寺くんが振り返る

「お、きたきた」

窓から差し込む陽の光で、君の髪の毛が明るく光っているのが、綺麗だった

「ここ、座ってよ」

神宮寺くんは、自分の横の机を指差す

「うん、」

2人きり。どきどき緊張しながら君の横に座った

「早速なんだけどさ、相談、してもいい？」

ここへきて、やっぱり少しだけ怖くなる

だけど、来てしまったからには、しょうがない

「………いいよ、」

私は腹をくくって、返事をした

君は、ありがと、と少し微笑んで目を伏せた

その照れたような表情に、最悪のシナリオを想像する

「実は、俺、」

「ギター、自分の買おうと思って」

「え？」

「え？……あ、いつも使ってるやつは、勝手に学校の借りてるだけなんだ」

「そう、なんだ、」

恋愛相談じゃなかった。

一気に体の力が抜けた

「それで、俺の夢知ってるの、Aちゃんだけだからさ、」

「……俺と一緒に、俺のギター選んでくれませんか」

私の大好きな声で、ささやく君

「……私でいいの？」

不安そうな私に向かって君はまた微笑んで、

「Aちゃんが、いいの。」

私の心を、甘く、溶かした