蒼く、染まれ Y.J（２） (ページ18)

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恥ずかしくなって、急いでつねっていた手を離した

そんな様子を見て、笑う君

「夢じゃないよ、ちゃんと現実」

神宮寺くんは、いい？と首を傾げて、私が頷くと部屋に足を踏み入れた

「今、もしかして寝てた？ごめんね、急に来ちゃって」

「ううん、大丈夫」

「ありがとう。どう？気分は」

ベッド脇、床に腰を下ろした君は、心配そうに下から私を見上げる

「昨日よりは、良くなったよ」

「そっか、よかった。」

神宮寺くんは微笑んで頷いた

しばらく、沈黙が私たちを包む

神宮寺くんが突然来てくれて、熱のせいだけじゃない、体が熱くなった気がした

「……今日、放課後のお仕事、あった？」

どきどきから逃れようと、君に質問をする

「あ、いや、なかったよ」

「そうなんだ、よかった。あれ、1人じゃ大変だもんね」

神宮寺くんも、そうだよね、と苦笑い。

「今日ね？いろんな授業でプリントが出たんだけど、」

「え、どうしよう。元気になったらもらいに行かなきゃ」

焦って呟いた私に、君が笑いかける

「もちろんそうなんだけど、そうなると大変でしょ？だから、今回は俺がね、」

そこで神宮寺くんが、カバンから大量のプリントを取り出して、

「Aちゃんの分、ぜーんぶもらってきちゃいました」

そう言って、私を優しく見つめた。

「………え、本当に？ごめんね、なんか、」

「いやいや、俺が勝手にしたことだし。ありがとう、って受け取ってよ」

君はにこにこと笑ったまま、私にその紙束を差し出す

「……ありがとう、神宮寺くん」

「はい、どういたしまして。」

思えばこんなことをしてくれるクラスメートは、他にいない

友達の顔を順番に思い返してみたけど、やっぱり浮かばなかった。

君という存在の大切さが

じわじわと、心の中に広がっていく。

「……あ、そうだ。あっぶな、忘れるところだった」

神宮寺くんは、慌てたようにまたカバンに手を入れると、

「……はい。これも、渡したくて」

そう言って、私が前に1番好きだと言ったチョコ菓子をくれた

またしても心の奥がじわりと暖まる

「食べられそうな時に、俺のこと考えて食べてね」

″俺のこと考えて″

笑いながら、そこを少しだけ強調した神宮寺くん

「………ありがとう、」

君の顔だけじゃなくて、私の顔も

きっと赤かったはず。