蒼く、染まれ Y.J（２） (ページ33)

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バレンタインで思い出すのは、

やっぱりあの頃。

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高校2年の終わり、その頃の私たちは、

迫ってくる2月14日になんとなくわくわくしながら、毎日を過ごしていた

クラスでは女子が内緒話をする光景をよく見るようになったし、

男子がそわそわと女子のグループを盗み見ているようなくすぐったさも、感じるようになった

「Aちゃん、チョコ食べれる？」

休み時間に、クラスの女子が私に声をかけてくる

「うん、食べれるよ」

「ほんと！じゃあAちゃんにも作るね！」

嬉しそうに、メモに私の名前を書き込むその子

「おいしく作るね～～！」

かわいい笑顔を咲かせてあっという間にいなくなったその背中を見送る

その時、どこかから視線を感じてふと教室を見回すと、

「…………」

教室の反対側から、神宮寺くんがこちらを見ていた

放課後、また先生に呼ばれた私と君

「この本を、図書館に運んでほしいの」

一体どうしてこんなに私のクラスだけ雑用があるのだろう。と思うほど、毎回の量が多い

本の山を見ながら、神宮寺くんが少し顔をしかめた

「わかりました」

「助かるわ、よろしくね」

代わりに私が返事をすると、君は呆れたように眉毛をくっと上げる

「きっとすぐ終わるよ」

先生がいなくなった後、神宮寺くんに声をかけると、

「俺、居残りは好きだけど、雑用は嫌いだな」

と、君は複雑な言葉を、こぼした

本を数冊持って、図書館へ向かう廊下の途中

「あ、そろそろバレンタインじゃん」

君がふと、呟く

ちょっとだけ、心臓がふわりと浮いた

「ほんとだね」

「誰かにあげるの？」

「え？」

思わず振り向くと君が、まっすぐに私を見つめる

本当はね、君に。

君にあげたいけど、

きっと、そんな勇気、私にはない。

「……誰にも、あげないよ、」

意気地なしの自分に失望しながら、運んでいる本の束を持ち直した

すると、横を歩いていた君が突然、

「………じゃあ俺に、ちょうだいよ」

なんて、小さな声でささやくから、

また心臓が、浮いちゃうんだ。

「Aちゃんのチョコ、欲しいな」

照れたように視線をそらした君の横顔

窓からの光で明るく見えるその髪の毛

もう私には、すべてが愛おしい

バレンタイン、君に渡すね。