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「………受け取ってもらえない、って。わかってたけどね」
駅の改札の前、神宮寺くんが呟いた
「ねえA、」
「………うん、」
「俺、勇気出して受け取ってくれるか聞いたけど、やっぱだめだったわ」
君はまた、切なそうに笑う。
「……そっ、か」
もう、なんて言えばいいのかわからないよ。
君がなんとなく私に好意をむけるその度に、いやでも思い出すんだ
君との大切で愛しい時間と、
つらく苦しい、別れの季節を。
「………困らせて、ごめん、」
「ううん、」
謝るくらいなら、私と会って話をしなければいいのに。
ふとそんな考えが浮かぶけど、これはきっと私の本心じゃない
私たちの想いは、過去のもの。
そうやって線を引くことによって、
もう一度傷付かないように、自分を守った
「………また連絡する」
何もしゃべらない私を、まっすぐに見つめて、君は言う
してこなくても、いいのに。
神宮寺くんは、何がしたいの。
やっぱり私には、君がわからないよ。
「今日はありがとう。おやすみ」
「………おやすみ、」
これ以上会話はないと察した君の言葉に、私も返事をする
「……じゃ、またね」
またね、か。
今度は君は、私の返事を待たずに
手をひらりと振ると、ゆっくりと遠くなっていった
その背中が、あの頃大好きだったな。なんて、
そんなことを考えながら、君を見えなくなるまで見送る
今日は、眠れるかな。
・
神宮寺くんはその日からも、暇さえあれば頻繁に連絡をしてきた
「やっほ〜今日も練習だよ」
うん、知ってるよ。
「おつかれさま」
君があまりによく連絡してくるものだから、なんとなく君の生活リズムを把握し始めた今日この頃
「今休憩なんだけど、ちょっと相手してよ」
傷付かないためには、断ればいいのに。自分から距離をおけばいいのに、
私にはなぜか、
それが、できない。
「いいよ」
短く返すメッセージ
君からの返事を待つ数秒間、
鼓動が速くなるのはどうしてだろう。
最近、神宮寺くんとやりとりをすると、
あの頃の淡い想いが心を満たす
そしてそれは、
私の胸を締め付ける。
「お、ありがとう」
画面に映る君からの返事を、
じっと見つめた
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作者名：詩愛
| 作成日時：2020年2月19日 15時
