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story275 ページ39

暗く深い海──



否、ここは海なのか正確には分からない



だが波の音が聞こえるので海だと彼女は思った



深く息を吸い込み目を閉じる



再び彼女が目を開けた時に映っていたのは



美しい桃源郷だった



『桃源郷…綺麗…』


小鳥がさえずり川の流れる音が聞こえる



満開の桜が咲き乱れる


「あはは、君が初めてここに来た時も同じこと言ってたよね」


今にも心奪われそうな美しい景色と良く似合う優しい声色に彼女は振り向いた


『お久しぶりです、ディユさん』


「…久しぶりだね千早ちゃん……
いや、Aちゃんって呼んだ方がいいのかな?」


桃源郷を見守る神、ディユは愛おしい彼女を見て一瞬息を呑んだがすぐ会話を再開する


『ここでは千早と呼んでください
もう…小野千早という名を知るのはあなただけなので』


その言葉にディユは喜びを覚えた
彼女を彩っていくあの世界では誰もこの子の前の名前を知らない

そして自分だけがその名前で彼女を呼べる
なんという特権


『あの、何故私をここに…?』


自身が喜びに浸っていると彼女は早速本題に入ってきた


「そうだったね、ここに呼んだのはね…
…君の愛するあの子がいなくなったあと、君はどうするか聞かなくちゃいけないからなんだ」


神の仕事は多忙である
人間が神を祀る神社に行き、絵馬に書かれている願いを叶え、お供物を有難く頂き、年に1回神々全員が集まり会議をする

お亡くなりになった者たちを輪廻転生の輪に送り届け、人によっては異世界へ送り届ける

異世界に送り届けれるのには幾つか条件がある

簡単に説明するがどれだけ辛い人生を送ってきたか、なのだ

そして異世界に行った者たちを見守るのもまた神の役目


『エースくんがよぼよぼのおじいちゃんになって亡くなった後、ですか…

そうですね、ロジャーとのもうひとつの約束
“世界をゆっくり見て生きる”という約束をしましょうかね』


ディユの話に彼女は少し考え込んだが彼の左目をしっかり見て答えた

なんとなく予想はついていた…
彼は彼女がこう答えると分かっていた

彼女を止める権利など彼にはない


「(一緒にここで生きよう…そんなこと言っても彼女はきっと断る)」


彼は彼女の言葉に賛成するかのように微笑んだが微笑みと反比例に爪がくい込むほど拳を握りしめていた

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リリア(プロフ) - ☆TRICK☆さん» ありがとうございます!これからも頑張ります!!(窓辺の席の私) (2020年7月2日 19時) (レス) id: a1c1a0f2f0 (このIDを非表示/違反報告)
☆TRICK☆(プロフ) - こんにちは、更新頑張ってください!応援してます!!(隣席より) (2020年7月2日 18時) (レス) id: 75a0db6355 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:サン・D・リリア | 作成日時:2020年5月29日 8時

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