参 ページ4
それから彼女の告白は日課になった。
挨拶のように繰り返される好きという言葉に慣れてしまった自分に驚く。
今朝も、おはようございます、好きです!と昨日と同じ言葉を貰った。
今日は一年と二年合同での任務だが、緊張もしていないらしい。
むしろ顔色の悪い同期の背中をさすりながら、笑っている。
合同任務といっても死の危険があれば二年生が代わりに祓う、要は引率だ。
彼女の方は飲み込みも早く、一ヶ月程でメキメキ力をつけてきている。
チームワークや協調性も、心配はいらないだろう。
昼間でも廃病院の中は暗く、なんとなく嫌な感じがした。
どこからか水滴の垂れる音がしている。
「ここからは二手に別れましょうか」
地下、一階、二階、三階、四人連れで歩き回るのは面倒だし時間もかかる。
灰原がじゃあ俺伊地知と組むね!と言った。
流石に自分ではガチガチの伊地知くんの緊張を解くことはできない、灰原に任せることにした。
「足を引っ張らないように頑張ります!」
この状況でも彼女は変わらず元気そうだ。
階段を上がり、奥の方の病室までをくまなく見た。
来た道を戻り、ナースステーションの中を覗いていた彼女に声を掛けようとした瞬間。
下から伊地知くんの悲鳴が聞こえた。
その瞬間彼女が飛び上がり、カウンターを飛び越えた。
階段の手すりを滑り、地下まで降りていく。
二人の正確な位置も分からないはずなのに彼女は真っ直ぐに走っている彼女。
病院の地下にあるのは、霊安室だ。
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作者名:翠-すい- | 作成日時:2021年1月31日 21時