策士な伊小萩 ページ21
◉相合傘
家を出る前に見た天気予報では降水確率は70%だった。
打ち合わせが終わって、帰るとき。
天気予報は優秀だったようで、傘をささないで帰るには厳しいくらいには雨が降っていた。
傘は持ってきていない。
てなわけで。
「入れて」
語尾にハートが付くくらいかわいこぶって言うと、剣持刀也は眉を顰めた。
「嫌だ」
「またまたぁ。私がずぶ濡れで帰ってもいいの？」
「マネージャーに送ってもらえよ」
「弥さんはこれから本社で仕事だから」
「タクシー呼べばいいんじゃないですか」
「お金もったいないじゃん」
「じゃあ」
「通り道でしょ、お願い」
「……大体お前、またかよ。天気予報くらい見てから家出ろと何度言えば」
「ごめんね？」
「……」
だって今日は剣持がいるって聞いてたからさ。
困った顔して精一杯申し訳なさそうに上目遣いで謝れば、優しい剣持は折れて入れてくれることくらいわかってる。だってしおらしい私に弱いもんね。
「……しょうがないな。次はないからな」
「ありがとう剣持！大好き！」
「うるさい」
濡れないように近付いたおかげで歩くたびに触れる肩に満足して、口では悪態をつきながらも、傘を私の方へ傾けている。自分の肩を雨で濡らせてるだろうから、お礼と暖を取ることを口実に家に誘って温かい飲み物でも出せば、もっと一緒に居られるなあと、ひっそりほくそ笑んだ。
◉あいみみ
剣持といるときにわざと有線イヤホンで動画を見て、ふふ、と聞かせるように笑い声を漏らせば、普段は鬱陶しいくらい構ってくる私が自分を放ったらかしていることを訝しんで、絶対に声をかけてくる。
「何見てるんです？」
「ん？んー……」
いかにも動画に集中してますというように生返事を返せば、面白くない彼は私の片耳からイヤホンを奪う。
「人といるときに自分の世界に入るの、良くないと思いますけど」
「今いいところなの〜。返して」
「……」
奪われたイヤホンを取り返して動画を見続けると、剣持からじとっとした視線を感じるので、右にいる彼を見遣れば口を尖らせて拗ねたような表情を浮かべていた。
「一緒に見る？」
右耳のイヤホンを外して剣持に渡せば、表情を変えることも拒否することもなく、渋々耳にはめる。
わざと右耳のイヤホンを渡せば、お互い外側の耳につけることになって、顔が近くなるからね。
いつもより近い距離にある剣持の体温に意識を奪われて、動画の内容なんてもう頭に入ってこなかった。
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こはく(プロフ) - すみません💦間違えました！この作品めっちゃ好きです！更新頑張ってください！ (11月14日 22時) (
レス) id: 094a65f89f (このIDを非表示/違反報告)
テト(プロフ) - こはくさん» コメントありがとうございます。消してないですよ！もしかしたら別の作者様かもしれません！ (11月14日 12時) (レス) @page36 id: 690a3228cb (このIDを非表示/違反報告)
こはく(プロフ) - 作品なんこか消しましたか？大好きだったので悲しいです (11月1日 21時) (レス) id: 094a65f89f (このIDを非表示/違反報告)
テト(プロフ) - milさん» ありがとうございます〜！更新頑張ります！ (10月20日 21時) (レス) id: 690a3228cb (このIDを非表示/違反報告)
mil(プロフ) - 最高です。更新楽しみにしてます (10月19日 8時) (レス) @page25 id: 5c38ee4561 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：テト | 作成日時：2023年10月8日 16時
