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106 / 名残り ページ10
side A
「あ、いいじゃん」
「でしょ？借りた」
「返せよちゃんと」
「ふふっ、返すわ」
リビングに戻ってきたニノは、潤から借りたものを羽織っていて
借りパクすんなよ、と言えば笑って返ってきた。
その後ろで、やり取りに小さく微笑んでる潤。
少し意識が逸れたかな。
これを維持は出来ないけれど、意識が逸れる瞬間があるのはいいこと。
「ん、潤、ココア出来たよ」
戻ってきた潤に合わせて温めたココアを差し出す。
思い出させてしまうけれど、流すほうが良くない。
処理の仕方を染み込ませたほうがいいから。
「ぁ、ありがと、……ごめんね、」
「ううん、謝んないの」
謝らないと不安なのか、謝ったときの反応を見ないと不安なのか
癖のように謝罪を零す。
蘇るように再び震えだす、カップを持つ手。
その手を、そっと支えた。
「……行く、よね、」
「うん、行くよ。準備も出来たし、もう行けるね」
こんなに時間が空いたからもういいや、って
そうなれば望み通りなんだけど、そうもいかない。
あそこに行かないと気が済まないのは、
洗脳の名残り。
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作者名：ヲ伽
| 作成日時：2023年3月16日 17時
