104 / 新しい課題 ページ7
side A
頭を預けていた枕からの振動で、目が覚める。
慌てて手にしたスマホには、翔ちゃんからの着信。
そして画面の上のほうに表示されている時刻は、午前6時。
「はい、」
『潤から電話あったんだけど俺もう仕事の時間迫っててさ、相葉くんが今日午後からって聞いて、』
そんな説明を受けながら、ベッドから降りてジャージに着替え、
財布やキーケースを手にする。
「了解、すぐ行く。なんて伝えてる？」
『いつもどおり結構パニクってたから、すぐに相葉くんから電話来るからその場に居てって伝えてある。俺にかかってきたときもう既に玄関だったみたいだから、急いでやって』
「ん、わかった、切るね」
車に乗りながら電話を切り、すぐに潤に電話をかける。
スピーカーにしながら急いで車を走らせていると、鳴り止んだコール音に安堵する。
「潤？」
『ぁ、あいばくん…っ』
「うん、翔ちゃんから聞いてもう向かってるからね。今は玄関に居る？」
『ん、玄関…で、す、座って…』
「うん、わかった。すぐ着くから、座ったそのまま深呼吸してごらん、」
あれから、もう数ヶ月が経った。
少しは良い方向に向かうんじゃないかと思われたけれど
今度は違った課題が出てきた。
クリニックに行きたくなる衝動が大きすぎること。
彼が苦しいと感じることがあれば、どうしてもクリニックが脳内を過ぎる。
そこが浮かぶこと自体を止めるのは難しいとは思っていたけれど
それ以前に、衝動を瞬間的に抑えて俺らへの連絡だったりをすることも難しい。
苦しさを消したい、忘れたいという感情が優先的になりそうになるらしい。
それは誰しも有り得る感情だから悪ではないんだけど、それも苦しさになってしまうから大変。
クリニックは苦しさを完璧に消してくれなくて、遺ることを彼も理解しているのに
それでも、知ってしまった一瞬の安らぎを求めてしまう。
「潤っ、」
4人それぞれで持つことにした合鍵を使って開けた先には
座り込み、抱えた膝に頭を乗せ、喉をぐ、と押す彼。
彼が必死にやめようとしてるのを見ているから
だから、一瞬の安らぎを求めてしまう衝動を責められない。
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作者名：ヲ伽
| 作成日時：2023年3月16日 17時
