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side A
" 心、貸して "
それが合言葉になってから数ヶ月、
彼は、その言葉をときどきくれるようになった。
助けてとか、話を聞いてとか、そう言うより余程言いやすいみたいで。
少したどたどしいけれど、彼も彼なりに、"溜めこまないように" と努力してくれてる。
「……ねぇ、」
「ん？」
「音…、あと、ほんの少しだけ、下げてほしくて、」
「あ、大きかった？ごめんね、」
「ううん、ごめんね、」
「…今日ちょっとしんどい？」
彼からの気遣いや罪悪感も、なくなることはない。
でも、その中にあるものは変わった。
溜めこまないこと、
自分の心に耳を傾けてみること。
「………ちょっと、……心、…貸して、」
「うん。何か遺る？」
彼が壊れたきっかけの出来事から、
気づけばもう1年以上。
調子が良くなったり悪くなったり、波はあるけれど
調子が落ちたときにも、そこから得られるものはあって。
こうやって身体に表れるときもあるけれど、
何が心や頭に遺っているのか、零すきっかけになることもある。
喉に触れそうな手を握ると、
耐えようと強く握られる。
変わらないそれは、悲しいものではないと思うようにしてる。
「うん、それがちょっと引っかかったね、」
「ん、……さっきの、も…ね、」
「ん？」
「"下げてほしくて"、って、……言い方、いやだった、？」
「ううん？気になんなかったよ、キツくもなかった」
遺っていたことを零して、
気になった自分の言動を聞いて。
この回数も、少しずつ増えている。
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作者名：ヲ伽
| 作成日時：2023年3月16日 17時
