五月雨とアフォガード -3- (ページ38)

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side M

もうダメだと思うくらい、

どうにかなってしまうんじゃないかと思うくらいうごめいていたものは

ニノが来てくれたことで、ゆっくり静まった。

きっと、数時間かかってるけれど。

でも、待っていたことも

助けが来ると信じられたことも

わかってくれていた。

入りたいと思ったことも、消したいと思ったことも

否定されなかった。

「あ、おはよ。あのさ、今クリニックの前なんだけどね、ちょっと諸々は後で話すから、3人まとめて来て貰える？俺と潤くんの車がそれぞれあってさ」

今は手を離せないことも言わずもがな察してくれて、

ずっと手を繋ぎながら、僕が手を離さなくていいように３人に頼んでくれる。

僕の車を運転する人と、このニノの車を運転する人と

もう1人はたぶん、僕がみんな居たほうが安心するから

僕の家に先に行って、って言わずに来てもらうことにしてくれた。

「すぐ来ると思う、もうちょっと待ってようか」

「うん、………ごめんね、朝、早いよね、……寝てないよね、ニノ、」

「ううん、潤くんがひとりで耐えるほうが嫌だよ」

この優しさが、この温かさが

どうしても心地よくて。

これに慣れてしまっていいのかな、と

ときどき、不安になる。

でも。

「………ねぇ、入りたいって……思ったの、ダメじゃ、ないよね、……傷ついたの、だめ…じゃ、ない…よね、」

どうしても確認したいときに、

どうしても自分を認めてほしいときに、

彼らの言葉がないと、倒れてしまいそうで。

「うん、ダメじゃない。ダメじゃないよ。そうやって確認出来るのも、いいことだよ」

すべてを受け止めて肯定してくれるのが

とても安堵して、それが身体中に染み渡る。

「帰ったらココア飲もうか、もう夏に近いけど、ホットにして休憩しよう」

ずっとその話にしないのも、

話を変えるタイミングも

全部気遣ってくれて。

「ふふ、この気遣いは、俺らにとって重くないものだから。大丈夫だよ」

その気遣いで、今度は僕がみんなを疲れさせてるんじゃないかって

その不安まで取り除いてくれる。

恩返しがしたい。

だからちゃんと、しなきゃ。

正しく丁寧に、ではなくて、出来ることを、の意味で。