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side N
「寝れなかった？」
「ん……、なんか、ふふ、うん、寝れなくて、」
電気が煌々とついているリビングへ通されて
未だ申し訳なさそうな彼とソファへ座る。
以前と比べると本調子じゃないから疲れてるはずなのに、
寝られないってことは、おそらく何か脳内に遺ることがあるんだろう。
「何か気になってる？」
「………気に、なって、……頭が、ずっと動いてて…」
「そっか、それで寝られない？」
話し始める方法をいつも悩むみたいだから、
自然な流れで ”話してもいい” という雰囲気にすれば、ゆっくり零してくれる。
「……今日の、こと…じゃ、ないんだけど…」
「うん、大丈夫だよ」
彼がぽつりぽつりと話してくれたのは、一昨日のこと。
言われた言葉がなかなか抜けないらしく。
ものすごく遺るわけじゃないけれど、一人になるとぐるぐる脳内を巡るらしい。
1ヶ月くらい前のことや、一昨日のこと、数ヶ月前のこと。
いろんな時期のことがいろんなときに頭を巡っちゃうのは、疲れちゃうよね。
「ちょっと言葉キツかったね、」
「…ん、……そんなに、大きいことじゃないのに、遺る、」
「大きいことじゃないから、余計にぐるぐるしちゃうんだね」
「……いやだったの、……もうちょっと、…優しい言葉がよかった、」
「うん、そうだね」
こう思って、本当はこうしてほしくて、
そんなふうに、誰かに零したかったんだろうな。
話を聞いて、って直接言うのはまだ難しいけれど
零しても大丈夫なんじゃないかな、って思ってもらえてるのはうれしい。
「……甘えてるかな、」
「ううん、潤くんが嫌だなと思って、もう少し優しい言葉がよかったなと思うのは間違ってることじゃないよ。それを思って俺らに話すことくらいいいんだよ」
「……聞くのは、いやじゃない？」
「うん、やっと潤くんの話せる相手になれたんだもん、嫌じゃないよ」
「………ふふ、そっか、」
その相手に何かしたいわけでもないし、
どうにかなることじゃないのは潤くんもわかっていて。
だから別に、起きたことをどうにかしたいわけじゃない。
ただ、話す相手と、零してもいいっていう許可がほしかったんだと思う。
柔らかく、安堵したように笑った表情が
やけに嬉しかった。
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作者名：ヲ伽
| 作成日時：2023年3月16日 17時
