122 / “どうもしない” 、話 ページ26
side O
「そっかそっか、焦っちゃう？」
「ん…焦る、取る前に、決めてから行ってるはずなんだけど、」
「そっか、それもあるよね、見られてるから早くしなきゃって思う？」
うんうん、と二度ほど頷くから、たぶんずっと困っていたんだろう。
そっか、これも彼が感じる人の目だな。
自分が人より劣ってるっていう気持ちがあるから、
スピードに関しても早くしなきゃって同様なんだろう。
俺らが普段何も気にしていないこともこんなに気になるんだから
そりゃ、俺らとのごはんも疲れるだろう。
「じゃあさ、もうちょっと人が少なくなったら行こうか。それで、俺が潤の前に居て一緒に選びながら進もう」
「……早く、しなくても、…？」
「うん、人少なかったら大丈夫だし、まずはゆっくり選ぶことをしてみよう、俺もそんな急かされたくないもん、ふふ」
貴方に合わせてるんじゃなくて、俺もゆっくり選びたいから、と
その保障も忘れずに伝える。
すぐに安堵した表情を見せるんだから、彼には日常の安心感が少ないんだと思う。
彼がゆっくり前を向こうとしてるのは伝わってるし、
前に進んでるのも実感してる。
だからこそ彼への思いやりが、俺らの中で ”責任” にならないんだと思う。
”こうしてあげなきゃ”、ではなくて、”こうしたら彼は安心するかな”、になる。
言葉の重みも、心地よくなる。
俺らのそれはたぶん、ゆっくり彼に伝わってるはず。
まだまだ、”散歩” は始まったばかり。
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作者名：ヲ伽
| 作成日時：2023年3月16日 17時
