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115 / 歪な探しもの ページ19

side S









「潤、ココア飲まない?」


「あ…飲む、」


「じゃ淹れるねー?」









そろそろ準備を終えそうな彼に、

彼がいつも落ち着くために飲むココアを淹れる。




少しでもね、仕事の緊張を解せたほうがいいし。









「ん、どうぞ、座って飲も、」


「ありがとう、」









自分は座っててもいいのか、座ったら任せちゃうみたいで良くないのか

たぶんそんなことを考えてどうしたらいいかわからず立ち尽くしてた彼。




そんな彼にココアを手渡し、ソファへ誘導する。




座って待ってても、悪い印象なんて持たないのにな。

そういうところまで気が回ってしまって、気遣わなきゃと感じて

”どうするのが正しいのか”、それを考えてしまうんだろう。









「あったかい、」


「ね、」









ひと口飲み、ふ、と息を吐いた彼が

また、喉へ手を近づける。









「潤、」









そっとその手を握ると、我に返るようにこちらを向く。

無意識なんだろうな。

喉に何かが詰まる感覚と言ってたから、それをどうにかしたいっていう無自覚。









「あ、ごめ、」


「ううん、謝んなくていいよ。……緊張する?」


「……ちょっと、……わかんない、けど、」


「ん、そっか。……今日の人が何か気になる?」


「前……一緒に、やったから、」


「あ…、1ヶ月くらい前だね、」


「ん、そのとき、何か……キツかったかなって、気になってて、」


「潤の言い方?」


「ん……わかんないんだけど、…気になって…、」


「うん、」


「その、前に……ちょっと、嫌だなって、勝手に…僕が、傷ついたことがあって、」


「うん」


「だから…もしかしたら、ちょっと、言い方キツくなって…傷つけたかもしれなくて、」









数週間前の、智くんと潤の会話を思い出す。

その数週間前にも、相葉くんが潤とそんな会話をしたと言ってた。

どうしても気になってしまうと言ってたな。




落ち着かないのか、手の指を擦るように動かし始める。

歪む表情が、脳裏にクリニックがチラついていることを表している。

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作者名:ヲ伽 | 作成日時:2023年3月16日 17時

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