114 / 紅が表すもの ページ18
side S
目が見えなくなったり、
クリニックに行きたいのが治まらなくて一緒に前まで行ったり、
仕事がどうにも怖くなったり。
そんな日を数ヶ月ずっと繰り返した。
良くなる悪くなるの問題ではなくて、
彼が話すようになるのがまず大切で。
ちょこちょこ話すときが、少しずつ増えている。
そして、俺らが彼を気に掛けるのはもう安定。
「ねぇ、潤の家寄ってくれない？」
個人の仕事を終え、次は5人での撮影場所へ移動というとき
少し彼が気になり、家へ寄る。
まだ出てない時間だろうから、少し様子を見て一緒に行こうと思う。
「あ、やっぱり居る」
合鍵で入ると、リビングの扉の向こうに動く人影。
おじゃまします、と靴を脱いで上がると、
扉から顔を覗かせる彼。
「あ、翔くん、」
「うん、準備中ごめんね。ちょっと様子見に来た」
「……昨日の僕、何か変だった、？」
「ううん？そういうことじゃないよ。単に一緒に行こうかなと思って」
何か変なところがあったのかと捉えてしまった彼の誤解を解いて
リビングに戻ろうと促す。
「あ……ごめんね、すぐ準備する、」
「ううん、大丈夫だよ。俺が勝手に来たんだし」
「や…でも、待ってもらっちゃってる、」
「ふふ、大丈夫、ゆっくりしてから行こうよ」
くつろいでから行けるのは有難いから、とちゃんと理由を説明すると
少し納得したのか、慌てることなく準備を進める。
喉が少し赤くなっていたから、また息が詰まって触れたんだろう。
それがあるから、少しゆっくりさせてから行きたい。
一応智くんに説明のLINEを送っておいた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 284人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ヲ伽
| 作成日時：2023年3月16日 17時
