111 / 貴方はずっと、 ページ15
side M
仕事のことかな。
昨日、全部流して眠りについたから？
また、対処しなかったから？
みんなに、話せばよかった。
昨日のことなんて、もう遅い。
昨日のことなら昨日話せって思われるに決まってる。
「……このまま、見えるようにならなかったらどうしよう」
ぐるぐると脳が動く中、
遠くで玄関が開く音。
「え、潤、大丈夫っ？」
「……リーダー？」
「うん、そう。どうした、倒れた？」
「ううん、何かにぶつかって…、」
「ケガは、」
「や、どこも、痛くない、」
「そう…、……いろいろ考えてた？電話あったから、掛けなおしたんだけど」
「あ…ごめん、聞こえてなかった…」
手に持ってるくせに。
それに、結局こんな早朝にリーダーを呼んだことになった。
「……ごめんね、…朝、早いのに」
「嫌なら来ないよ。大丈夫。ほら、一旦リビング行こう」
手取り足取り誘導してもらって、ソファへ腰を下ろす。
いつもなら飲み物を入れてくれるけれど
今日は僕が服の裾を掴んでるから、諦めてくれた。
少し、傍に居てほしい。
「どした、」
「……ううん、……見えないから、」
「うそ。見えないの、慣れてきてるじゃん。……どうした、話していいよ」
すべて見抜かれる。
彼は最初から、すべて見抜いてた。
僕でも気づいていない異変を、最初から見抜いてた。
隣からそっと頭に回ってくる手が、温かい。
隣からそっと握られるもう片方の手も、温かい。
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作者名：ヲ伽
| 作成日時：2023年3月16日 17時
