98 / その一滴が、 ページ1
side O
たぶん少しは落ち着いたんだろうけれど、
顔を上げるタイミングだったりがわからないらしく
俯いたまま、手を握りなおしたり頭を動かしてみたりする潤。
「潤くん、ココア温めなおそうか、冷めちゃったでしょう」
それを見て、空気を変えようとニノが動いてくれた。
言われたことには反応しなきゃと思う彼だから、自然と顔が上がる。
「何か食べる？それとももう少し寝る？」
「あ……ごめん、まだ朝早い…、」
「ううん、俺らは全然。潤が今眠れるなら、寝たほうがいいよ」
選択に迷う彼は、ニノから手渡されたココアを飲みながら考えてる。
仕事とか、誰かのためになる選択ならすぐに出来るのに
こういう自分のための選択は異常なまでに苦手なんだな。
「………今日、仕事…は、」
「それは調整してもらった。今日と明日と明後日の3日間はもう調整してもらったから、とりあえずは安心していいよ」
「それ以降はまた後で考えよう」
「ん、………ちょっと、だけ、寝る、……みんなは、」
「どうしようか、ひとりのほうが落ち着くなら一旦帰ることも出来るし、居たほうが安心ならまだ居るよ」
彼の性格上、酷な質問だったかなと思えば
案の定、俺らの顔色を窺うような表情。
「潤、リーダーは居ることを選んでほしいわけでもどっちでもないよ。俺らが潤の選択で傷つくこともない。潤が安心するほうを選んでほしいだけだよ」
言葉が足りなかったな、と思ったところに、相葉ちゃんが付け足してくれた。
奥深く、奥深くまで相手の心情を気遣おうとするから
それが思い込みにまで発展してしまうんだろう。
だから言えなくなるんだろうな。それが恐怖に変わってしまって。
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作者名：ヲ伽
| 作成日時：2023年3月16日 17時
