43 / 一歩ずつ、 ページ44
side M
案内された個室は、所謂診察室のようなところではなくて
ひとつのテーブルとふかふかしてそうな椅子がふたつ。
そして、真っ白なベッドがひとつ。
どうぞ、と椅子へ座るよう促され
それにもまた、流されるまま。
「こちら、ご存じだったんですか？」
「ぇ、あ……いや、ネットで…調べてたら、ここが、」
「あ、そうなんですね。ここ、検索してもうしろのほうにしか出てこないでしょう、ふふ」
「あ、まぁ…、ふふ、結構うしろに、」
きっと僕のこと知ってるはずなのに触れず、
どうしてここに来たかもすぐに聞かず。
パンフレットのようなものを一枚テーブルに置いて
世間話の延長のような雰囲気で話し始める。
「ホームページを見て下さったのなら話は早いんですが、」
「…はい、」
「ここは、”忘れたい苦しさ” を消すためのクリニックです」
ついさっき、文字で見た言葉を
声で投げられる。
文字よりも少し大きな衝撃と戸惑いに
頷くしか出来なかった。
「貴方が今心に溜めている苦しさを忘れることが出来るところです」
「……忘れる、………どんな、ことでも、？」
「えぇ。たとえ一般的に ”軽い” と捉えられることでも、貴方自身にとってとても重く溜まっていれば、それを消したいと思えば、それは可能です」
その言葉に、思いきり腕を引かれたように感じた。
” たとえ一般的に軽いと捉えられることでも ”
認めてもらえたような気がして、
軽いことなんてない、と言ってもらえたような気がして。
目の前にある境界線に、
触れてはいけない境界線に、少し触れた気がした。
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ヲ伽 -otogi-(プロフ) - Kazue Akasakaさん» コメントありがとうございます✨『らしい』という言葉がとてもうれしいです、、！楽しんでいただけるようにがんばりますので、ぜひお付き合いよろしくお願いします🥰 (2022年11月24日 14時) (
レス) id: a5fdc137e0 (このIDを非表示/違反報告)
Kazue Akasaka(プロフ) - こちらでのコメントは初めてさせて頂きます。ヲ伽さんらしい繊細なお話で続きが楽しみです。 (2022年11月23日 19時) (レス) @page5 id: fbdba45f48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヲ伽
| 作成日時：2022年11月23日 18時
