39 / 魅惑的 ページ40
side M
釘付けになった。
完全に怪しいのに、そんなことわかってるのに。
”苦しい心”、この言葉が僕を強く惹きつけて離さなかった。
さっきまで無心で、無感情のまま画面をスクロールしていた指が
まるで感情を持ったかのように、ゆっくりと吟味するように動く。
.
『 忘れたい苦しさを、お持ち寄りください 』
『 心の苦しさを消す、お手伝いをさせていただきます 』
.
聞き慣れた単語なのに
それが文章になれば、こんなにも惹きつけられる。
ビジネス上ではきっと、単なる謳い文句なのに
クリニック、と記されたそれに、何故か隅から隅まで読んでしまう。
「………住所、」
サイトに記された住所。
そこを調べて、存在しなかったらやめよう。
そう心に決めて、住所を調べる。
”やめよう”、なんて、まるで行きたいみたい。
「ぇ、ほんとにある…、」
出てきた写真付きのそれに驚く。
サイトに記されていた住所のビル名が出てきて、
人通りが少ないところではあるけれど、とても綺麗な2階建ての建物。
サイトにも記載がなかったクリニック名は、ここにも記載されていない。
名前は付けてないのかな。
普通なら、名前のないクリニックなんて怪しい、で終わる。
でも僕は今、それに無理やり理由を付けた。
あまりにも強く惹きつけられている自分に驚く。
そして今、サイトに記載されている営業時間と
部屋の中の時計を照らし合わせてる自分にも、驚く。
「……ちょっとだけ。………見てみるだけ、」
携帯、財布、帽子、マスク、コート。
それらを手に持って、携帯の画面には住所を残して家を出る。
連絡に躊躇った彼からの通知は見えているのに
それさえも後回しにするほど。
僕はただ、ただ
”忘れたい苦しさ” に、惹きつけられていた。
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ヲ伽 -otogi-(プロフ) - Kazue Akasakaさん» コメントありがとうございます✨『らしい』という言葉がとてもうれしいです、、！楽しんでいただけるようにがんばりますので、ぜひお付き合いよろしくお願いします🥰 (2022年11月24日 14時) (
レス) id: a5fdc137e0 (このIDを非表示/違反報告)
Kazue Akasaka(プロフ) - こちらでのコメントは初めてさせて頂きます。ヲ伽さんらしい繊細なお話で続きが楽しみです。 (2022年11月23日 19時) (レス) @page5 id: fbdba45f48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヲ伽
| 作成日時：2022年11月23日 18時
